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2017年

12月

08日

「役立つ」をテーマに進化した第3回GaLboa杯、四川省成都市で表彰式

 12月1日、中国・四川省の大学生を対象にスマートフォン(スマホ)向けアプリの企画や開発の腕を競う「第3回GaLboa(ガルボア)杯」の表彰式が四川省の省都、成都市で関係者らおよそ200人を集めて開かれた。一昨年に続いて今回が3回目の開催で、10チーム・10個人の計37名が入賞した。主催は成都サービス貿易協会。共催は成都ウィナーソフトの子会社である成都サービスアウトソーシングプラットフォームで、日本のゲーム会社、ガルボアが協賛する。前回まではスマホのゲームに限ったコンテストだったが、今回から「社会に役立つ」アプリやゲームをテーマとして、枠を広げた。エントリは、企画内容を競う企画部門が190チーム、プログラミングまで行う開発部門が18チームで、表彰式当日のプレゼンテーション後に最終審査を行い、各賞を決定した。

表彰式が開催された天府ソフトウェアパークF区はスタートアップ企業が集まるエリア
表彰式が開催された天府ソフトウェアパークF区はスタートアップ企業が集まるエリア

 企画部門の最優秀賞を受賞したのは、ミニゲーム「地球を救う(拯救星球)」を考案した成都ソフトウェア学院の「YooSen」の2人(鄧琪さん、高国慶さん)で、賞金2万元が贈られた。審査員は、「絵がかわいいことと、遊び方が斬新で完成度が高いことを評価した」とした。

企画部門の最優秀賞を獲得した「YooSen」のリーダー、鄧琪さん
企画部門の最優秀賞を獲得した「YooSen」のリーダー、鄧琪さん

 開発部門の最優秀賞は、「大学図書館の座席占有状況と分析アプリ(高校图书馆占座与数据分析)」をつくった成都ソフトウェア学院の4人組「N-Library」の皆さん(李永春さん、张洪军さん、黄雷胜さん、邓子玉さん)で、3万元が贈られた。審査員は「テーブルにあるQRコードでアプリにチェックインすることで、他の学生が図書館の空き状況を確認できる実用的なプログラム」と評価した。

開発部門の最優秀賞を獲得した「N-Library」のリーダー、李永春さん
開発部門の最優秀賞を獲得した「N-Library」のリーダー、李永春さん

 商品化の可能性が高いゲームに贈られるGaLboa特別賞は、企画部門の「リア充向けスケジュールアプリ(日程有约)」を考えた成都ソフトウェア学院の厳鵬さんが受賞。「自分のスケジュールを公開することで、家族や友人との約束がしやすい。また、他人のスケジュールを確認でき、お互いが空いている日を確認できるので誘いやすい。自分が行きたい場所があったら、いっしょに行く人を募ることもできる」と、審査員の間で好評だった。

企画部門のGaLboa特別賞を受賞した厳鵬さん
企画部門のGaLboa特別賞を受賞した厳鵬さん

 開発部門では「jelly_monster」をつくった成都ソフトウェア学院の宋欣蔓さんが受賞。審査員は、「遊び方が斬新でおもしろい。伸びしろは少ないかもしれないが、完成度が高い」と評価した。

開発部門のGaLboa特別賞を受賞した宋欣蔓さん
開発部門のGaLboa特別賞を受賞した宋欣蔓さん

 主催者の成都サービスアウトソーシング協会の徐洁秘書長は、「GaLboa杯は、海外市場と直結するオープンなビジネスプラットフォームを目指す革新的な人材育成の場でもある。応募作品は、専門家チームによるアドバイスで、商品化の可能性が高まる。今回から社会に役立つというテーマを掲げ、より広い参加を得ることができた」と話した。

成都サービスアウトソーシング協会の徐洁秘書長
成都サービスアウトソーシング協会の徐洁秘書長

 コンテストに協賛する日本のゲーム制作会社、ガルボアの中村文彦専務執行役員は、「今回は、グーグルチャイナなど、現地のソフト会社やメディアが表彰式に出席した。入賞した作品を商品化したいという申し出があれば、ガルボアが間に入って、著作権を守りながらスムーズに商品化できるよう手助けしたい」と話す。ガルボアは、中国子会社のGaLboaチャイナを江蘇省泰州で12月に設立する予定。中国での教育ソフトビジネスを本格化させる一方、学生の支援も行っていく。

ガルボアの中村文彦専務執行役員
ガルボアの中村文彦専務執行役員

 今回、GaLboa特別賞を受賞した2人は、副賞として来年1月26日に開催するBCN ITジュニア賞2018の表彰式に招かれ、BCN ITジュニア特別賞を受賞する予定だ。
(取材・文・写真:ITジュニア育成交流協会 道越一郎)

2017年

11月

30日

中国・山東省大学生ソフトウェア設計コンテストで運転VRシステムがグランプリ

山東省青島市・中国石油大学(華東)の学生5人組がつくった「VRを使った運転免許試験模擬システム」がグランプリ
山東省青島市・中国石油大学(華東)の学生5人組がつくった「VRを使った運転免許試験模擬システム」がグランプリ

 11月25日、第15回山東省大学生ソフトウェア設計コンテストの表彰式が中国・山東省済南市の山東交通学院で開催された。グランプリには、山東省青島市・中国石油大学(華東)の学生5人組(高振卓さん、高伟さん、杨金路さん、毕驰さん)がつくった「VRを使った運転免許試験模擬システム」が輝き、賞金1万元が授与された。また準グランプリは山東省東営市・中国石油大学勝利学院の「高齢者介護スマートアシスタントシステム」と山東省済南市・山東大学の「ドライバーアシスタントシステム」が獲得し、それぞれ2000元が授与された。

グランプリ・準グランプリ受賞者と関係者・来賓が記念撮影
グランプリ・準グランプリ受賞者と関係者・来賓が記念撮影

 グランプリの「VRを使った運転免許試験模擬システム」は、VRゴーグルとハンドル、アクセル、ブレーキ、シフトレバーなどを備え、実際に運転する感覚で操作するシステム。キーを回してエンジンをかけ、運転をスタート。前後左右の風景だけでなく、エンジン音も再現するなど、高いリアリティをもつ。例えば、ウインカーなしで車線変更すると減点されるなど、実際の運転免許の実技試験と同じ行程を体験することができる。

運転免許の実技試験をVRで疑似体験できる
運転免許の実技試験をVRで疑似体験できる

 準グランプリの「高齢者介護スマートアシスタントシステム」は、声でコントロールすることで、窓やカーテンを開閉したり、少し離れたところにある物を取ってきたりするロボットなどに、スマートフォンを組み合わせた介護システム。同じく準グランプリの「ドライバーアシスタントシステム」は、よい運転習慣を身につけるためのスマートフォンアプリで、ナビゲーションと混雑状況、データ分析モジュールを備え、ドライバーを安全な運転に導く。荒削りながら、いずれの作品も実用性に富んだ作品だった。

「高齢者介護スマートアシスタントシステム」は音声コントロールで物を運ぶロボットをはじめ、高齢者向けのシステム
「高齢者介護スマートアシスタントシステム」は音声コントロールで物を運ぶロボットをはじめ、高齢者向けのシステム

 山東省大学生ソフトウェア設計コンテストは、山東省を中心としたプログラミングコンテストで、中国だけでなく世界の大学生に門戸が開かれている。今年はハワイからの参加もあった。17の課題についてプログラミングを行うソフトウェア部門と、日本語と韓国語によるコンピュータ知識を問う外国語部門がある。今年のソフトウェア部門には、56の大学から970チーム、計5800名がエントリ。グランプリ、準グランプリのほか、一等賞73名、二等賞142名、三等賞219名が決定した。

主催団体の一つ、済南市科学技術協会の路来良副主席が祝辞を述べた
主催団体の一つ、済南市科学技術協会の路来良副主席が祝辞を述べた

 表彰式では、開催校山東交通学院の唐勇党委副書記長や、主催団体の一つである済南市科学技術協会の路来良副主席が祝辞を述べた。また来賓として表彰式に招かれたBCN会長兼社長でITジュニア育成交流協会の奥田喜久男理事長は「1年間の苦労が報われ表彰されたみなさんおめでとう。人は夢によって導かれる」と祝辞を述べた。さらに、ITジュニア育成交流協会が支援しているコンテストの一つ、U-16プログラミングコンテストの状況を来場者に紹介した。また、論語の一節を中国語で披露したり、日本語で張継の楓橋夜泊を吟じたりして、会場を大いに沸かせた。(BCN・道越一郎)

BCNの会長兼社長でITジュニア育成交流協会の奥田喜久男理事長も来賓として招かれ、祝辞を述べた
BCNの会長兼社長でITジュニア育成交流協会の奥田喜久男理事長も来賓として招かれ、祝辞を述べた

(取材・文・写真:ITジュニア育成交流協会 道越一郎)

2017年

11月

30日

第17回高校生ものづくりコンテスト、松山工業高校の石田有希人さんに栄冠

 11月18・19日の両日、第17回高校生ものづくりコンテスト全国大会(中国大会)が広島県と岡山県で開催され、高校生たちが日頃鍛え抜いたものづくりの技を競った。

 全国工業高等学校校長協会が主催する高校生ものづくりコンテスト全国大会は、「旋盤作業」「自動車整備」「電気工事」「電子回路組立」「化学分析」「木材加工」「測量」の7部門で、全国のブロック予選を勝ち上がってきた選手たちが技術・技能を競うコンテスト。このうちBCN ITジュニア賞の対象となる電子回路組立部門は、基板制作とプログラミングのスキルを競う組込み技術系のコンテストだ。2時間30分の競技時間内に設計仕様にもとづいて回路を設計・製作し、コンピュータでその回路を制御するプログラムを作成して、課題に沿った動作を行うシステムを完成させる。

会場の広島県立広島工業高校。この日は寒波が来ていて11月とは思えない寒さだった
会場の広島県立広島工業高校。この日は寒波が来ていて11月とは思えない寒さだった

 電子回路組立部門の会場は、電気工事、化学分析、木材加工の各部門と同じ広島県立広島工業高校。競技は2日目に行われた。プログラミングやハンダ付けの技術だけでなく、作業態度や服装までが審査されることもあって、選手たちはきびきびとしたしぐさで課題のページをめくり、器具を手にする。2時間30分はあっという間に過ぎ、最後までキーボードを打つ手は止まらなかった。

選手たちはひと言も発することなく、黙々と作業に取り組む
選手たちはひと言も発することなく、黙々と作業に取り組む

 競技終了後は、課題をどこまでクリアしたか、実際に動作を確認するプレ審査が行われた。この結果、六つある大課題のうち五つまでを完全にクリアし、六つめに着手していた石田有希人さん(愛媛県立松山工業高校)がこの時点でトップに立ち、本審査に入った。

電子回路組立部門でただ一人の2年生、優勝した石田有希人さん。来年以降も期待がかかる
電子回路組立部門でただ一人の2年生、優勝した石田有希人さん。来年以降も期待がかかる

 最終成績は、プレ審査で1位になっていた石田さんが優勝/厚生労働大臣賞に輝き、2位に板橋直哉さん(佐賀県立佐賀工業高校)、3位に中島拓海さん(長野県松本工業高校)と、プレ審査の順位通りの結果だった。優勝した石田さんは、電子回路組立部門の選手で唯一の2年生。夏に行われた第12回若年者ものづくり競技大会電子回路組立てでは銀賞だったが、この大会でその雪辱を果たした。石田さんは、BCNが来年1月26日に開催するBCN ITジュニア賞2018を受賞することになる。

(取材・文・写真:ITジュニア育成交流協会 市川正夫)

2017年

11月

24日

【寄稿】第38回高校プロコン、宮城県工業高校が優勝

愛媛県立松山工業高校 電子機械科教諭
山岸貴弘

 

 今年で38回を数える伝統ある全国高校生プログラミングコンテスト(高校プロコン)が、11月11日、埼玉県さいたま市のソニックシティで開催された。会場には選手や指導教諭、観客など約100人が集い、大会に臨んだ。

38回の伝統をもつ高校プロコン
38回の伝統をもつ高校プロコン

 高校プロコンは、対戦型ゲームプラットフォーム「CHaserOnline」で勝負を決するコンテスト。夏から行われてきた1次予選、2次予選を勝ち抜いた全国の8校が本選会場に集い、勝負を競った。

 ChaserOnlineは、C言語で作成したAIプログラムでクライアント(コマ)を動かしながら、「化石」「三葉虫」「ターゲット」「アイテム」を取得して得点を加算していくことで勝ち負けを決めるゲーム。得点は、化石>三葉虫>ターゲット>アイテムの順なので、得点の高いものから取っていくAIプログラムが必要になる。最大の得点源は、相手のクライアントを土で埋める動作(プット)だ。今年から1ターンにつき2回の動作が認められ、相手を見つけてプットしやすい環境になった。プットの得点はターン(残り手数)×10点なので、早い段階でプット勝ちを収めれば、かなりの高得点が期待できる。さらには、アイテムを置いたり、土を更地にしたりなどの動作も組み込まれ、ワープ(瞬間移動)もあって、対戦では各チームが個性あるプログラムを展開した。

ChaserOnlineは毎年少しずつ進化する
ChaserOnlineは毎年少しずつ進化する

 本選では、最初に8チームの同時対戦を行い、前半・後半のそれぞれの順位をもとに上位4チームが決定。結果は、1位が愛媛県立松山工業高校、2位が宮城県工業高校、3位が長崎県立長崎工業高校、4位が山梨県立都留興譲館高校で、準決勝は松山工業対都留興譲館、宮城県工業対長崎工業の組み合わせになった。

 準決勝は、一対一の勝負。これも前半・後半で総得点などを競う。第1試合の松山工業対都留興譲館は、お互いプットすることなく、化石類を多く取った松山工業が勝ち、決勝に駒を進めた。第2試合の宮城県工業対長崎工業は、確実に化石類を多く取る宮城県工業が2勝して決勝に進んだ。

優勝した宮城県工業高校チーム(手前)
優勝した宮城県工業高校チーム(手前)

 決勝は昨年と同じ宮城県工業対松山工業。第1試合の前半、先にプットしたのは松山工業だったが、その後、化石類を多く取る宮城県工業に迫られ、最後は宮城県工業が2回プットして大きく点を離した。後半は双方互角の展開で化石類を取得していったが、実力の勝る宮城県工業が2連勝。強豪校が3年ぶりの栄冠に輝いた。

2017年

11月

16日

世界を舞台に戦うプログラミングのスーパースターを育てる──情報オリンピック日本委員会の筧捷彦理事長に聞く

 高校生以下の生徒・学生を対象とした国際科学オリンピックの一つ、国際情報オリンピック(International Olympiad in Informatics, IOI)。29回目の今年は、84か国から308人の精鋭たちがイランのテヘランに集まり、プログラミングの腕を競った。日本からは4人の選手が出場し、金メダル3、銀メダル1と国別メダル獲得数で1位に輝いた。また、開成高等学校2年生の髙谷悠太さんは、六つの課題のうち五つで満点を取り、総合成績1位という快挙を成し遂げた。

 長年コンテストを通じて若者のプログラミング教育に携わってきた情報オリンピック日本委員会理事長の筧捷彦早稲田大学名誉教授に話を聞いた。筧理事長は、大学生を対象とするACM-ICPC 国際大学対抗プログラミングコンテスト(ICPC)でアジア地区予選を主催する情報科学国際交流財団の理事長でもあり、また、U-22プログラミングコトンテストとパソコン甲子園では審査委員長を務めるなど、プログラミングを志す若者をさまざまなかたちで応援している。

情報オリンピック日本委員会の筧捷彦理事長。情報科学国際交流財団理事長、U-22プログラミングコンテストとパソコン甲子園で審査委員長を務める
情報オリンピック日本委員会の筧捷彦理事長。情報科学国際交流財団理事長、U-22プログラミングコンテストとパソコン甲子園で審査委員長を務める

■日本代表は1000人のうちのトップ4人

 中学生と高校生、高専生の一部が対象のIOIは、問題を理解してアルゴリズムを考え、プログラムに仕上げて、動かして、求められている正しい答えを出し、決められた時間内に結果を出す競技。世界各国から国内予選を勝ち上がった最大4人が出場する個人戦だ。競技は2日間で、1日5時間で3問ずつの問題を解いていく。スポーツのオリンピックと同じで各国に委員会があり、委員会が登録した国または地域から選手が送り込まれる。

 日本代表の選考は、1000人ほどが参加するインターネット予選から始まる。これを通過したAランク上位80選手を東京に招いて予選会を実施し、トップ20選手が春休みに1週間の合宿を行う。ここで本大会と同じ条件で同じレベルの問題に取り組むコンテストを4回行い、勝ち残った4人が日本代表としてIOIに出場する。まさにトップ中のトップの戦いだ。

 IOIは、国際的視野でプログラミング力にすぐれた人材を発見し、その人材たちが競いあうことで能力を育むことを目的に開催している。さらに、10年後、20年後に「おお、君とあのとき戦って負けたな、勝ったな」と、国境を越えた仲間意識が共同研究に結びつくことも期待している。

 出題される問題は国際委員会が英語で議論してつくるが、問題解決力を競うという観点から、選手にはそれぞれの国の言葉に翻訳したかたちで出題される。日本選手団は、選手4人と出場経験のあるOB・OGを中心とする引率の団長、副団長、随行員の7人で構成する。引率者は選手のサポートと同時に、問題文の翻訳も手がける。

 大会は1989年にブルガリアのプラベツで第1回が開催され、日本は94年の第6回スウェーデン・ハニンゲ大会に初めて参加。96年まで3回連続で選手団を送った。しかし、日本の義務教育、高校教育ではプログラミング教育のプの字もなかった当時、学校の反応も悪く、選手集めは大変だった。さらに経済情勢の悪化もあって97年に参加を取りやめ、以後9年間参加できない期間が続いた。

 しかし94年頃、当時総理大臣だった小泉純一郎氏が「なぜスポーツばかり盛んで科学技術に関しての世界コンテストへの参加が少ないのか。日本からも参加者を送り出せ」と号令をかけたことをきっかけに、国からの補助金を得て2006年以降毎年選手を送り出している。

 現在、委員会に登録のある国と地域は87で、ここ数年は毎年80か国以上から300人を超える選手が集まる。表彰はスポーツのオリンピックと同じで、メダルを授与する。成績の上位半分までにメダルを与えることになっていて、およそ上位12分の1までが金メダル、次いで12分の3までが銀、12分の6までが銅メダルが授与される仕組みだ。

 メダル獲得数をもとに独自に算出した国別順位では、日本は当初20位あたりに位置していたが、このところ11位、5位と着実に上昇して、今年はついに1位まで上りつめた。ダントツに強かった年だった。個人成績でも総合1位、4位、5位、59位と過去最高だ。総合1位に輝いた髙谷さんは、中学3年生のときに日本代表選手として参加し、高校3年生の今回まで4回連続で金メダルを獲得した。そのうえ、今年は数学オリンピックでも全体で1位を獲得した逸材だ。将来は研究者になりたいと話している。

 次のIOIは、2018年9月に日本の茨城県つくば市で開く。およそ2億円以上もの経費がかかる。政府からの援助もあるが、情報オリンピック日本委員会でも1億円以上の寄付などを募らなければならない。ぜひ皆さんに協力をお願いしたい。少しずつ準備を進めているが、2020年ごろからは、国内予選の仕組みを変える予定だ。簡単な問題で多くの人が挑戦できる機会をいくつか設け、合格したら2次予選に進む。参加者が増えることで、プログラミングに興味をもつ人が増え、裾野を広げる手助けになるだろう。

スーパースターが“普通に”就職するという大問題

 06年に参加を再開して以降、48人の選手はほぼ全員が東京大学の数学科か情報科学科に進学した。ただし、全員が博士課程に進むわけではなく、修士課程までで卒業して、IT企業に“普通”に就職する人もいる。ここが最大の問題だ。

 経営者は「ITの時代。IT技術者は命」などと言いながら、就職の仕組みは依然としてそうなっていないように思う。昔からのコンピュータメーカーでも企業でも同じだ。採用時点では、専攻とは関係なく、4年制大学の卒業者を横並びで、学部を問わずに採用する。こうした古いスタイルの人の採用方法から抜け出していない。その結果、博士課程を出て、特殊能力が光っている人を採りたがらない傾向にあるようにも思える。

 アメリカでは、学生時代にプログラミングやコンピュータサイエンスを必死にやった人たちがシリコンバレーで会社を興し、それがgoogleになり、Yahooになった。そんな例は日本にはない。だから、コンピュータを極めた人はほとんどがgoogleのような企業に就職していく。名のある海外メーカーの日本支社に勤めても、結局技術を生かすのはちょっとした日本語化ぐらいで、営業に回されたりする。世界中からできる人を採るgoogleに優秀な人材が集まる。

 大学生が対象のACM-ICPC 国際大学対抗プログラミングコンテスト(ICPC)は、3人一組の大学対抗コンテストだ。チーム戦で1チームにつき1台のPCで課題に取り組む。全世界でおよそ3万人以上が参加し、決勝大会には世界から100を超えるチームが集まる。表彰は、成績順にほぼ3チームずつ、金、銀、銅のメダルが授与される。日本がICPCに初めて参加したのは98年で、IOIへの参加がとぎれていた時期だ。

 しかし年を経て、IOIを経験した選手たちがICPCに参加しはじめ、ICPCのレベルが上がってきた。IOIの代表には選ばれなくても、予選でAクラス程度まで残った選手が再びICPCにチャレンジするというパターンもある。いずれにせよ、IOIをくぐり抜けた選手がICPCに出るようになってから、決勝大会でも上位に入るようになってきた。

ICPCのOB、西川徹氏が創業したPreferred Networksのウェブサイト。東京都千代田区大手町に本社を置く
ICPCのOB、西川徹氏が創業したPreferred Networksのウェブサイト。東京都千代田区大手町に本社を置く

 こうした中学校から高校、大学まで、最高レベルのコンテストをくぐり抜けてきた才能が、社会で徐々に頭角を現しつつある。その一つが、Preferred Networks(PFN)だ。IoTにフォーカスした深層学習技術のビジネス活用を推進する会社で、創業者の西川徹社長は日本がICPCに参加しはじめたころのOBだ。さらに、初期のIOIの代表6人のうち、1人はgoogleに入ったが、残り5人がPFNに入社した。AIを中心に世の中を技術で変えていこうという気概をもって取り組んでいる。トヨタ自動車が8月に105億円の出資をしたことで話題になった。シリコンバレーのベンチャー企業のような企業が日本にも生まれつつある。

■裾野を広げ、誰もがプログラムを通じて工夫ができる社会に

 少なくとも学生のコンテストでは、世界でトップを狙うことができる超スーパースターが登場しはじめている。しかし、裾野の広がりはまだまだだ。2020年に小学校で開始されるプログラミング教育は、まだ具体的な中身が定まっていない。「プログラミングをやらせれば、将来のプラスになるだろう」と塾に通わせる親は増えているが、塾で教えるプログラミングでは、子どもの夢を育てたり、「自分でなにかやってみよう」という力を育てたりすることにつながっていないように思う。

 世の中では、「情報の利活用が必要だ」と叫ばれている。とはいえ、まだまだプログラムは「オタクがやること」「下請けにカネを払って書かせるもの」と考える人たちは多い。それを変えていかなければならない。
 
 コンピュータを使って、いながらにして世界中の情報を集めて、共有できるようになってきた。しかし大事なことは、やり方を考えて、自分で手を動かしてプログラムを書けば、コンピュータが自分の代わりに仕事をしてくれることを、誰もが知って、使うこと。道具としてのプログラミングを、あたかもトンカチやドライバの使い方を覚えるように誰もが身につければ、社会は変わっていく。

 例えばU-22プログラミングコンテストは、IOIやICPCのようなアルゴリズムの戦いではなく、ありものの技術の組み合わせで、「おもしろい」「役立つ」「楽しい」ことを実現するコンテストだ。今年の作品は、点字を読み取ったり、シナリオの法則を見つけたりという目的を、既存の技術を組み合わせて実現していた。コードを書くことに意味があるわけでなく、技術を組み合わせて何を実現するかに意味があるというコンテストだ。これからの私たちが身につけなければならないのは、実際につくる力。すなわち、それがプログラミング力ということだ。「ほら、できるじゃないか」という力を、これからはみんながもたねばならない。そのために、学校教育は重要だ。

 最後に、IOIやICPCに挑戦する人たち向けのとてもよいテキストを2冊紹介したい。一冊は、ICPCの選手として出場し、現在PFNで活躍している秋葉拓哉さんたちが著した『プログラミングコンテストチャレンジブック』(マイナビ出版)だ。現在は改訂版も出ている。ICPCに出場したとき、前評判では秋葉さんのチームは絶対金メダルを取ると思われていた。しかし、難問につまずいて金メダルを逃した。その悔しさから、後輩たちには頑張ってほしいと、コンテストで好成績を収めるポイントをまとめたもの。もう一冊は、パソコン甲子園を主催している会津大学で教鞭を執る渡部有隆上級准教授の『プログラミングコンテスト攻略のためのアルゴリズムとデータ構造』。どちらも、非常にすぐれたテキストだ。(談)

 

筧捷彦理事長の略歴

1970年 東京大学工学系大学院修了 工学修士
1970年 東京大学工学部 助手
1974年 立教大学理学部 講師
1978年 立教大学理学部 助教授
1986年 早稲田大学理工学部 教授
2007年~2016年3月 早稲田大学基幹理工学部 教授
2016年 早稲田大学 名誉教授
1998年 ACM-ICPC 日本ICPC Board 議長
2003年 パソコン甲子園プログラミング部門 審査委員長
2010年 特定非営利活動法人情報オリンピック日本委員会 理事長
2016年 公益財団法人情報科学国際交流財団 理事長


(聞き手・構成・写真:ITジュニア育成交流協会 道越一郎)

2017年

11月

14日

第1回U-16プロコン三重大会、作品部門で開催、13作品が集合!

 11月3日、三重県鳥羽市の国立鳥羽商船高等専門学校で、第1回U-16プログラミングコンテスト三重大会が開催され、小・中学生が自分で考え、自分でプログラミングに取り組んだデジタル作品のできばえを競った。

大会終了後、審査員と記念撮影
大会終了後、審査員と記念撮影

●初の三重大会、ITジュニアの卵たちがつくった13作品が参加

 16歳以下の児童・生徒を対象とするU-16プログラミングコンテストは、パソコンやプログラミングが好きな少年少女のITに対する興味を深めることを目的に開催する地域密着型のプログラミングコンテスト。地域によって開催形態はさまざまだが、(1)パソコンやプログラミングに興味のある子どもたちに目標を与える(2)高専や高校でプログラミングを学ぶ学生・生徒が後輩たちを指導することで、ともに成長する(3)中学・高校・高専の先生方や地元企業から成る実行委員会の大人たちが、ボランティアで運営に取り組むという点が特徴だ。三重大会は、鳥羽商船高専が実行委員会の中心となって作品部門で開催した。

 鳥羽商船高専は、毎年夏休みに地域の小・中学生に科学・技術やものづくりを体験してもらう公開講座「サイテクランド in 鳥羽商船高専」を開催している。そのなかに、3年前から「いちごジャムでマイコンプログラミング」という講座を設けて、子どもたちにプログラミング体験を提供してきた。今年はこれをコンテストに発展させ、夏休みの講座を事前講習会として実施。11月3日に、夏からのプログラミング学習の成果を発表する場として、作品部門のコンテストを開催した。記念すべき第1回の今年は、工夫を凝らしたゲームや生活に役立つ13作品が参加した。

●高専専攻科の学生が展示準備をお手伝い

 コンテストの当日、午前中は参加者たちによる作品展示の準備時間にあてられた。鳥羽商船高専・江崎修央教授のゼミナールに所属する専攻科の学生たちが、運営スタッフとしてトラブル対応や機材の貸出し、設置などを手伝った。センサが計測したデータに応じて音が鳴る装置や10行以上のソースコードで構成されたゲームで、不具合があれば根気よく子どもたちといっしょに原因を探っていた。

高専専攻科の学生が展示の準備をお手伝い
高専専攻科の学生が展示の準備をお手伝い

 午後からは大会の本番、審査に入る。開会式で登壇した江崎教授は「発表と展示をぜひ楽しんでほしい。ほかの人に自身の作った作品を見てもらう、知ってもらう感動を味わってもらいたい」と述べ、参加者たちを激励した。

1分間で自分の作品を紹介する。緊張するがとても重要
1分間で自分の作品を紹介する。緊張するがとても重要

 コンテストの審査基準は、「発表」「アイデア」「技術」の3点だ。発表では、参加者が一人ずつ前に出て、作品の特徴や開発の経緯、つくる過程で難しかった点を、事前に用意したスライドやイラストを使いながら1分間で紹介した。展示審査は、展示作品の動作を地元IT企業などの審査員が確認し、子どもたちに詳細を質問する。すべての審査が終わり、評価を集計している間は、参加者同士で作品を確認し合ったり、作品でいっしょに遊んだりする場面が見られた。また、結果発表の前には、鳥羽商船高専の学生が開発したシステムの紹介が行われ、クオリティの高さで会場を驚かせた。

展示審査では審査員から次々に質問が飛んでいた
展示審査では審査員から次々に質問が飛んでいた
参加者同士の交流がみられたのは成果の一つ
参加者同士の交流がみられたのは成果の一つ

 審査は中学生の部に分けて行われ、小学生の部の最優秀賞には、津市立南立誠小学校4年生の田丸皓太さんが開発した「川下りゲーム」が選ばれた。船のアイコンを操作して、上から流れてくる減点マークを避けながら加点マークに当てるゲームで、加点以外に減点要素や時間制限を設けて競技性をもたせたことが高評価につながった。

小学生部門の最優秀賞に輝いた田丸皓大さん
小学生部門の最優秀賞に輝いた田丸皓大さん

 中学生の部の最優秀賞は、皇學館中学校1年生の井村風海大さんと鈴鹿市立鼓ヶ浦小学校5年生の長谷川直也さんがチームで開発した「ツンデレ貯金箱」。お金を入れると額に応じて表情を変える顔を正面に設置し、貯金のモチベーションを保つ。「貯金がなかなかたまらない」といった課題を、ユニークな方法で解決しようとした姿勢が好評だった。

中学生の部の最優秀賞、井村風海大さん
中学生の部の最優秀賞、井村風海大さん

●現役SEも作品のレベルに「驚いた」、成長に期待

 審査員を務めた現役のシステムエンジニア、東海テクノの舘信博さんは、「さまざまなアイデアの作品があって驚いた。不具合に気がついたときの対処が迅速で堅実。今後の成長が楽しみだ」と期待を口にした。

 事前講習会で講師を務めた岡村康子さんは、「参加者同士の交流や子どもたちの成長が感じられてうれしい。作品の幅が広いのは、課題を自分で見つけて解決しているから。いままでは教室で教えるだけだったが、これからは今回のようなコンテストを伴った活動を広げていきたい」と語った。

コンテストを支えた高専専攻科の皆さんを挟んで。岡村康子さん(左)と江崎修央教授(右)
コンテストを支えた高専専攻科の皆さんを挟んで。岡村康子さん(左)と江崎修央教授(右)

 全プログラム終了後、スタッフとして大会を運営した鳥羽商船高専専攻科の稲田樹さんは、「無事に終わってよかった」と安堵の表情をみせながら、「参加した子どもたちは手際がよく、いっしょに準備していても手伝うことは思っていたより少なかった」と微笑みながら語った。

 BCNは、小学生部門の最優秀賞に輝いた田丸皓大さんを、2018年1月26日に開催するBCN ITジュニア賞2018表彰式に招待し、BCN ITジュニアU-16賞を贈る予定だ。

(文・写真:BCN 南雲亮平)

2017年

11月

13日

U-16プロコン旭川・北海道大会、栄冠は中学3年生の成瀬有翔さんに

今年も旭川市科学館サイパルで開催。参加者が増えて満杯状態だった
今年も旭川市科学館サイパルで開催。参加者が増えて満杯状態だった

 16歳以下の子どもたちがプログラミングの腕を競う第7回U-16プログラミングコンテスト旭川大会と第4回U-16プログラミングコンテスト北海道大会が、11月5日、旭川市科学館サイパルで開かれた。会場には参加する選手や応援に駆けつけた教員・家族を含め、およそ100人が集まった。北海道大会の競技部門は、手に汗握る熱戦の末、午前中の旭川大会から勝ち上がった旭川市立愛宕中学校3年生の成瀬有翔さんが優勝。準優勝は帯広大会を勝ち抜いて北海道大会に出場した北海道立帯広工業高校1年生の柳沢佳吾さん、3位には成瀬さんと同じ旭川市立愛宕中学校3年生の瀬戸武蔵さんが入った。

 またU-16旭川プログラミングコンテストの作品部門では、金賞にゲーム「避けてみろ!」を制作した旭川市立中央中学校2年生の北川優奈さん、銀賞に『ぷよぷよ』や『ボンバーマン』という名作を彷彿とさせるゲームを制作した北海道旭川工業高等学校1年生の神野寛太君が輝いた。

北海道大会競技部門の優勝インタビューで喜びを語る旭川市立愛宕中学校3年生の成瀬有翔さん
北海道大会競技部門の優勝インタビューで喜びを語る旭川市立愛宕中学校3年生の成瀬有翔さん

 北海道大会の競技部門は、午前中に開催された旭川大会の上位16名と帯広大会の上位2名、釧路大会の上位3名の計21名によるトーナメント戦で行われた。この北海道大会で最も成績のよかった旭川大会の参加者が、自動的に旭川大会の優勝者になる仕組みだ。

 小学校6年生から高校1年生までの選手達が対戦型ゲームプラットフォーム「CHaser旭川版」を舞台に勝敗を決する。CHaserは、二つのプログラムを示すキャラクター、青の「COOL」(先攻)と赤の「HOT」(後攻)が、横15×縦17マスのマップにちりばめられたハート型のアイテムをより多く取るか、先に相手キャラクターの上にブロックを置く、もしくは相手が自滅することで勝敗が決まる。

青の「COOL」と赤の「HOT」が交互に動く単純なゲームで、参加はもちろん、観戦していても楽しい
青の「COOL」と赤の「HOT」が交互に動く単純なゲームで、参加はもちろん、観戦していても楽しい

 試合にあたって選手ができるのは、事前に書いたプログラムをサーバにセットすることだけ。試合中は相手プログラムとの戦いをただ見守るしかない。COOLとHOTが交互に100回程度動作することで試合が展開する。プログラムに使える動作は、1マス移動する「walk」、正方形で9マスの情報を得る「look」、直線上で9マスの情報を得る「search」、ブロックを置く「put」の4種類だけ。これに上下左右の4方向を組み合わせて、プログラムを書いていく。普通の選手でもおよそ1000行、多い選手では8000行ものプログラムを組み上げ、対戦に臨む。

選手たちは試合直前までプログラムの調整に余念がない
選手たちは試合直前までプログラムの調整に余念がない

 対戦では、順調にアイテムを取得して得点を伸ばすもの、敵が接近するとすかさずブロックを置いて勝利をおさめる攻撃的なものなど、いろいろな“性格”をもったプログラムが揃った。ずっと一定の動作を繰り返すだけで得点が伸びないものや、開始直後にいきなり場外に出てしまい自爆してしまうものは、年を追うごとに少なくなっている。

 動きにはプログラムごとに個性がある。固唾をのんでキャラクターの動きを見守るのは、選手だけでなく観戦に訪れた来場者も同じ。会場では、動きに応じて拍手や歓声が上がったり、ため息が漏れたりの連続だった。また、釧路高専OBの五十嵐優太さんの実況をはじめ、現役・OBを問わず、高専・高校の若いスタッフが運営に汗を流している姿が印象的だった。

うまくいってもいかなくても、声援と拍手とため息で会場は大いに盛り上がった
うまくいってもいかなくても、声援と拍手とため息で会場は大いに盛り上がった

 U-16旭川プログラミングコンテスト実行委員長の小川博東海大学教授は、「U-16プロコンを2011年に始めて今年で7回目、北海道大会は4回目を数える。旭川でも進んでいた理数科離れをプログラミングで変えていこうと考えたのがきっかけだった。2020年には小学校の義務教育でプログラムを教えることになった。今日集まった選手は、それを先取りしていることになる。楽しみながらプログラムを続けてほしい」と激励した。

出場選手を激励する実行委員長の小川博東海大学教授
出場選手を激励する実行委員長の小川博東海大学教授

 実行委員で審判長を務めた北海道旭川工業高等学校の下村幸広教諭は、競技後の講評で、「回を重ねるごとにプログラムは洗練されてきた。一番少ないときには参加者6人ということもあったが、中学校の先生を中心に背中を押していただいて、今年は60名を超える選手が参加するまでになった。参加した皆さんのプログラムは、なんとか難題を解決してやろうという意志が強く感じられるものだった。この経験はきっと将来に役立つと信じている」とエールを送った。

 なお、今年の大会では、旭川大会・北海道の競技部門優勝・準優勝者に、NPO法人ITジュニア育成交流協会の協賛企業である株式会社バッファローからポータブルHDDとマウスが副賞として贈られ、大会参加者全員にノベルティグッズが配られた。また、協会は作品部門を含めた各部門の優勝・準優勝者に図書カードをプレゼントした。

実行委員・審判長の北海道旭川工業高等学校・下村幸広教諭は、講評で「この経験は将来役に立つ」とエールを送った
実行委員・審判長の北海道旭川工業高等学校・下村幸広教諭は、講評で「この経験は将来役に立つ」とエールを送った

 「将来はパソコン関係の仕事をしたい」と話してくれた成瀬さんは、2018年1月26日に東京で開催されるBCN ITジュニア賞2018表彰式に招待され、BCN ITジュニアU-16賞を授与される。

選手全員と記念撮影
選手全員と記念撮影

 

(文・写真:ITジュニア育成交流協会 道越一郎)

 

2017年

10月

26日

U-16プロコン帯広大会、和気あいあいのなかに勝敗の機微

 10月21日、北海道帯広市で、第2回U-16プログラミングコンテスト(U-16プロコン)帯広大会が開催された。

昨年に続いて北海道帯広工業高校の教室で開催
昨年に続いて北海道帯広工業高校の教室で開催

 北海道のU-16プロコンは、2011年9月に旭川市で始まり、13年からは釧路市でも開催されている。帯広大会は昨年スタート。その前年には、U-16プロコンの存在を地域にアピールするために、旭川・釧路両大会の上位入賞者を招いて北海道大会(全道大会)をJR帯広駅南口前の公共施設、とかちプラザの広々としたアトリウム開催し、大会を知らない人々が足を止め、観戦する光景が見られた。

 今年の会場は、昨年同様、北海道帯広工業高校。5人の参加者は、工業技術部でITを学ぶ1年生だ。司会は3年生の五十嵐文哉さんが務めた。大会は、対戦型のゲームプラットフォーム「CHaser旭川版」を使い、5人の総当たり戦で先手・後手を入れ替えて同じ相手と2度戦うかたちで行った。勝敗数が並んだ場合は、プット(相手の上にブロックを落とす/相手が自滅する)による勝ちが多い順に順位を決めていく。

対戦を繰り返すうちに参加者の表情はさまざまに変わる
対戦を繰り返すうちに参加者の表情はさまざまに変わる

 参加者全員がふだんから対戦を繰り返してきた仲とあって、大会は和気あいあいとした雰囲気で進む。それでも、優勝・準優勝の2人は旭川で開催される全道大会に出場できるとあって、終盤には「お、旭川行きかあ」などの合いの手が入る場面が見られた。指導する電気科の増田尚之教諭、隣でマイコンカーラリーに取り組んでいた工業技術部のほかの班の生徒も、次第に熱を帯びてきた戦いを見つめる。

賞状を手にした優勝の池田京平さん(左)と準優勝の柳澤佳吾さんを囲んで
賞状を手にした優勝の池田京平さん(左)と準優勝の柳澤佳吾さんを囲んで

 2時間の戦いの結果、優勝したのは2勝2引分けの池田京平さん。準優勝には2勝1敗1引分けの柳澤佳吾さんが入った。柳澤さんは3位の川原翔太さんと勝敗数で並んだが、プット勝ちの数で旭川行きを決めた。閉会式で、優勝の池田さんが「全道大会に向けて、さらにプログラムを磨いていく」と誓うと、会場の全員から拍手が湧いた。今回、大会に参加した5人には、これから先も後輩たちや、やがて参加してくる中学生たちの指導という重要な役割が待っている。

実行委員長の辻田茂生さん。帯広市でIT企業を経営する
実行委員長の辻田茂生さん。帯広市でIT企業を経営する

 北海道のOSS(オープン・ソース・ソフトウエア)コミュニティでの雑談をきっかけに始まったU-16プロコン。実行委員会の面々が住んでいる市町村は、道内の広い地域に及ぶ。自分の街の子どもたちにプログラミングの楽しさを知ってほしいという気持ちが、旭川から釧路、そして帯広へと開催都市をふやしてきた大きな原動力になっている。広い北海道を股にかけて他地区の応援にも駆けつける大人たちの行動力と、子どもたちの成長を見守る熱い気持ちによって、北海道のU-16プロコンは地域に根を下ろし、これからも着実に歩みを進める。

(文・写真:ITジュニア育成交流協会 市川正夫)

2017年

10月

20日

【寄稿】U-16プロコン、北海道は今年も釧路で開幕!

 

 

 

 

北海道旭川工業高校 情報技術科教諭

 

下村幸広

 10月8日、「U-16プログラミングコンテスト釧路大会」が釧路フィッシャーマンズワーフMOOの釧路市男女平等参画センター「ふらっと」多目的スペースで開催された。

 

釧路高専の学生とOB、実行委員会の大人たちが大会を支える
釧路高専の学生とOB、実行委員会の大人たちが大会を支える

  旭川市で初めて開催されたU-16プロコンに遅れること2年、今年で5回目を迎えたこの大会は、釧路OSSコミュニティ(斉藤和芳代表)を中心に、釧路工業高等専門学校のプログラミング研究会とタッグを組んで開催してきた。参加者へのプログラミング指導は、釧路高専の学生が行っている。

 実行委員会は、6月に釧路市の教育委員会と中学校の教頭会に足を運んで開催の趣旨などを説明。7月の地域のコミュニティFMやタウン誌での告知によって十数人の参加申込みがあり、そのうち8~9月に釧路高専で開催した事前講習会に参加した子どもは10人だった。「参加者のなかに小学生が2人いて、プログラミングは厳しいかなと思ったけれど、学生たちの手厚い指導ですぐに理解してプログラムを書けるようなったのはうれしい誤算だった」(実行委員の佐藤貴行さん)。

 競技部門は、昨年同様、対戦型ゲームプラットフォーム「CHaser旭川版」で実施した。これは、事前に作成した自律型プログラムが定められた動きの回数のなかで交互に命令を発行し「相手より多くのアイテムを回収する」「出会った相手キャラクターの上にブロックを落とす」「相手が壁に突っ込むか場外に出て自滅する」のいずれかの方法で勝利を手にできる。プログラムによるキャラクターの動きの命令は4種類だけで、それらを移動方向である上下左右に使い分けて戦略を練る、いたってシンプルだが、奥が深いゲームだ。対戦が始まると、選手は何もすることができない。ただただ「プログラムが正しく動いてほしい」「バグが出ないでほしい」と祈るのみである。

シンプルだが奥が深い対戦型のゲームで勝敗を競う
シンプルだが奥が深い対戦型のゲームで勝敗を競う

  8日の本戦の出場者は6人。予選は3人ずつに分かれて、A・Bの2ブロックの総当たり戦だ。残念ながらバグで負けてしまうプログラム、同じ場所を動き続けてしまうプログラムもあるが、正しく動いても、対戦相手やマップとの相性が勝敗を左右する。ときには歓声、ときには悲鳴が上がり、観客との一体感があって見ていて楽しい。

 Aブロックからは1位の秋里くる実さん(鶴居中学校1年)と2位の篠田颯人さん(北海道教育大学附属釧路中学校1年)が、Bブロックからは1位の岸凪沙さん(阿寒中学校2年)と2位の吉本雄斗さん(景雲中学校2年)が決勝トーナメントへ駒を進めた。Aブロックからは共に初出場の2人、Bブロックからは昨年の経験者2人が勝ち上がったことになる。

 決勝戦はトーナメント戦で、乱数をうまく組み入れたプログラムをつくった篠田さんが僅差で優勝した。2位は初出場の秋里さん、3位は昨年2位の岸さんだった。この3人は、11月5日に開催するU-16プログラミングコンテスト全道大会への出場権を得た。

兄直伝のプログラムで優勝した篠田颯人さん
兄直伝のプログラムで優勝した篠田颯人さん

 優勝した篠田さんは、2年前のこの大会で優勝した篠田裕人さん(釧路工業高等専門学校2年)の弟だ。大会参加に向けて、兄からプログラミング指導を受けたことが勝因のようである。「全道大会に向けて、プログラムにさらに磨きをかける」と意気込む。

準優勝の中学校1年生、秋里くる実さんは初出場
準優勝の中学校1年生、秋里くる実さんは初出場

 大会終了後は、恒例のエキシビションマッチ。昨年までは、大会と同じルールで大人が本気でつくったプログラムを戦わせる通称「大人大会」を行っていたが、今年は昨年のU-16プロコン全道大会の覇者、下村恵子さん(釧路工業高等専門学校1年)と、一昨年の全道大会優勝者、加藤楓志さん(釧路工業高等専門学校2年)、そして篠田さんらによる試合を行い、大会とは違った盛り上がりをみせた。

 過去のU-16プロコン全道大会で釧路勢が強いのは、このエキシビジョンのおかげだと思っている。大人や先輩たちのプログラムには、戦略や戦術、多数のヒントが隠されているのだ。手塩にかけてつくり上げたプログラムを多くの観客の前で披露することは、恥ずかしさ半分、誇らしさと自信が半分といったところだろうか。そのプログラムに、大人たちが惜しみない賞賛の拍手を贈る。プログラムに行き詰まるたびに、高専の学生が助けてくれる。大人たちが褒め、昨年までは選手だった学生たちが、参加者の成長を助ける。この三者の一体感が、このコンテストの一番の魅力かもしれない。

釧路大会実行委員長の斉藤和芳さん
釧路大会実行委員長の斉藤和芳さん

 大会を通して、試合が始まるまでの不安な表情が和らぎ、試合ごとに笑顔に変わっていく子どもたちの姿は、実行委員会の大人や先輩たちがこの大会を続ける大きな原動力になっている。実行委員長の斉藤和芳さんは、「子どもたちの真剣な姿と成長に、何回泣かされたかわからない」と語る。

 昨年は選手として参加した加藤楓志さんは、今回はスタッフとして参加。大会終了後、「先輩方や大人の方たちのすごさを改めて感じた。大会の楽しさ、プログラミングの楽しさを多くの子どもたちに広めたい」と語っていた。U-16プロコンのすばらしさは、選手から指導者にシームレスにつながること。そしてスタッフになったときに、このような場所を提供してくれる大人たちの存在を知り、温かい気持ちとともに感謝の心が芽生えることにある。

大会終了後、参加者を囲んでスタッフ一同が記念撮影
大会終了後、参加者を囲んでスタッフ一同が記念撮影

 今年の新たな試みとして、実行委員会が市内の企業・個人協賛を募ったところ、実行委員会の面々が予想だにしない額の協賛金が集まった。斉藤実行委員長は、「手伝ってくれる釧路高専の学生たちが交通費の心配をせず、自由に小中学生のプログラミング指導ができる仕組みを構築したい」と、早くも来年の活動を見据えて熱く話してくれた。

2017年

10月

20日

八戸学院大学の大谷学長、フィリピンで日の丸IT専門大学設立に奔走

 「ものづくりニッポンが危機に瀕している。製造業、特に組込み系のIT人材不足は深刻だが、日本企業が優秀な人材を採用し、育てることは難しくなっている」そう語るのは、八戸学院大学の大谷真樹学長。いま、2019年をめどにフィリピンのクラーク国際空港にほど近いパンパンガ州アンヘレス市で、毎年1000人のIT人材輩出を目指す大学をつくろうと奔走している。IT企業を目指す人材をASEAN各国から集めてフィリピンで教育し、ゆくゆくは日本のIT企業を支える人材を育成するのが目的だ。

ものづくりニッポンの危機を語る八戸学院大学の大谷真樹学長
ものづくりニッポンの危機を語る八戸学院大学の大谷真樹学長

 ベースになるのは、来年6月にフィリピン・ターラック州サンマニュエル市に開校する八戸学院カーテル高校だ。現地学校法人のカーテル科学教育財団と共同で運営する6年間の中高一貫校で、日本語や日本文化を含むカリキュラムを展開する。卒業生を八戸学院大学短期大学部に新設する福祉学科で受け入れ、日本で国家資格の介護福祉士取得を後押しし、介護の場面で深刻な人手不足に悩む八戸市に人材を提供する。人材を求める八戸市の介護関連企業にも協力を呼びかけ、来日する学生の「里親」になってもらい、生活費などを奨学金として提供する。

来年6月に八戸学院カーテル高校として再スタートするカーテル高校
来年6月に八戸学院カーテル高校として再スタートするカーテル高校

 19年の設立を目指す大学でも、人材を求める企業が大学を通じて学生に奨学金を提供するかたちで、時間をかけて優秀な人材を育てる。現在、カーテル科学教育財団が運営する短大を4年生大学に改組して移転。日の丸ITの専門大学にする計画だ。ASEAN進出を狙う中小IT企業にとって、現地での人材採用や教育は大きな障壁だ。オフショア開発などで日本と現地企業との間を取りもつ人材や、ものづくりの場面でより専門的なタスクをこなす人材、またASEANで日系企業の現地駐在員として働く人材の育成を目指す。

 大谷学長は、「奨学金の原資は協力企業の寄付。黒字企業にとって学校法人への寄付は控除の対象になり、節税にも役立つ。そのうえで人材の安定供給を受けるメリットもあって、一石二鳥だ。首都圏のIT企業を中心に声をかけ、ぜひとも日の丸ITの専門大学を設立したい」と話した。(BCN・道越一郎)

2017年

10月

12日

第28回高専プロコン、維新ゆかりの地で若きIT志士が熱戦

 情報通信技術のアイデアや実現力を競う全国高等専門学校第28回プログラミングコンテスト(高専プロコン)の本選が10月8~9日、明治維新ゆかりの地・山口県周南市で開催され、若きIT志士が高専日本一の栄冠をかけて熱戦を繰り広げた。

 

106チームが日頃の成果を披露

 高専プロコンは1990年に第1回を開催し、2009年からはNAPROCK(NPO法人高専プロコン交流育成協会)国際プログラミングコンテストを同時に開催している。今年は周南市文化会館を会場に、「課題」「自由」「競技」の3部門で実施。予選通過校や、海外からのオープン参加チームなど、全国の高専から計106チームが参加した。

会場の周南市文化会館には今年もノボリが並んだ
会場の周南市文化会館には今年もノボリが並んだ

 開会式では、プロコン委員長を務める主管校・大島商船高専の石田廣史校長があいさつし、「相互の友情交換を十分に楽しみ、コンテストを通じて自らの柔軟な思考にもとづいた技術力と実践力をより高めてほしい」と呼びかけた。

プロコン委員長を務める主管校・大島商船高専の石田廣史校長
プロコン委員長を務める主管校・大島商船高専の石田廣史校長

 開会式後に初日のプログラムがスタートし、高専生の表情は、和やかな雰囲気から一転して緊張感でいっぱいに。各チームは競技部門の1回戦のほか、課題・自由部門のプレゼンテーション審査などに臨み、日頃の開発成果を披露した。

 

全試合満点のパーフェクト優勝

 「高専プロコンの華」といわれる競技部門は、前回に引き続いて枠の中にピースをはめて絵柄を完成させるパズルゲーム。大ホールのステージでライバル校と机を並べ、縦21.0cm、横29.7cmの枠に、多角形のピースを制限時間内にすべて並べてパズルを完成させるまでの早さと正確さを競った。

競技部門は大ホールで開催
競技部門は大ホールで開催

 各チームは、PCやスキャナ、カメラなどを駆使してピースの形状を取り込んで、用意したプログラムで組み合わせや配置場所をみつけていく。減点にはなるが、ヒントとして活用が認められたピースの形状情報・配置情報などを手がかりに、完成への道筋を探った。

 初日の1回戦4試合では、各試合の上位6チームが準決勝に進出。7位以下は敗者復活戦に回った。初日の結果を踏まえて、夜遅くまでプログラムの修正に取り組んだチームもあった。

競技部門に挑む東京都立産業技術高専品川キャンパスの「てんぱ組」(手前)
競技部門に挑む東京都立産業技術高専品川キャンパスの「てんぱ組」(手前)

 二日目は、敗者復活戦と準決勝、決勝戦が行われた。最終的に、東京都立産業技術高専品川キャンパスの「てんぱ組」が、唯一のノーヒントで全試合満点の偉業を達成し、優勝・文部科学大臣賞に輝いた。

表彰状とトロフィーを手に安どの表情を浮かべる「てんぱ組」のメンバー
表彰状とトロフィーを手に安どの表情を浮かべる「てんぱ組」のメンバー

 「てんぱ組」は、当初は3人でエントリしていたが、体調不良のメンバー1人が欠場する事態に。それでも3年生と1年生のコンビが奮闘し、優勝が決まった瞬間、緊張から解き放たれた2人は安どの表情を浮かべていた。

 前回は、多くのチームがパズルを完成させられなかったが、今回は多くのチームが完成までこぎつけるハイレベルの展開。パズルが完成するたびに客席からは温かい拍手が起こり、会場は大いに盛り上がった。

 

課題・自由部門は独創性に溢れた作品が並ぶ

 課題部門は、東京五輪・パラリンピックを意識して、前回と同じ「スポーツで切り拓く明るい社会」がテーマ。各チームは、VR(仮想現実)空間でスポーツが体験できるプログラムや、審判や観戦を切り口にしたプログラムなどをお披露目した。

鳥羽商船高専の「STEP――スコアブックと連動する動画閲覧システム」
鳥羽商船高専の「STEP――スコアブックと連動する動画閲覧システム」

 最高位の最優秀賞・文部科学大臣賞は、新たなスポーツ観戦・上達の支援システム「STEP――スコアブックと連動する動画閲覧システム」を開発した鳥羽商船高専が受賞した。

課題部門で最優秀賞・文部科学大臣賞に輝いた鳥羽商船高専のメンバー
課題部門で最優秀賞・文部科学大臣賞に輝いた鳥羽商船高専のメンバー

 自由部門は、水田の監視システムや会話型事故防止システム、ドローンを活用した水産業支援システムなど、課題部門に負けじとばかりの独創性に溢れた作品が並んだ。

香川高専詫間キャンパスの「EachTouch」
香川高専詫間キャンパスの「EachTouch」

 最優秀賞・文部科学大臣賞は、複数人でデバイスを囲み、タッチしたユーザーを識別しながらゲームを楽しむ「EachTouch」を発表した香川高専詫間キャンパスが獲得した。

自由部門で最優秀賞・文部科学大臣賞を獲得した香川高専詫間キャンパスのメンバー
自由部門で最優秀賞・文部科学大臣賞を獲得した香川高専詫間キャンパスのメンバー

高専出身起業家がエール

 閉会式の前に行われた高専出身の起業家による特別講演会では、さくらインターネットの田中邦裕社長(舞鶴高専卒)とjig.jpの福野泰介社長(福井高専卒)が登壇。会場の後輩たちにエールを送った。

田中邦裕社長(左)と福野泰介社長
田中邦裕社長(左)と福野泰介社長

 田中社長は、企業する際のポイントについて「お金をかけずに起業することが大事。リスクを低くするために、失敗しても笑っていられる金額でスモールスタートすることがおすすめだ」と述べ、奨学金で研究室にサーバを設置したことが、その後の起業につながったことを振り返った。

 そのうえで、「世の中、何をみるかで結論は変わる。やりたいことをみつけるために高専生活を送ってほしい。高専はネタが多いので、すごくおもしろいことがみつかるはず。就職しても、進学しても、『その先に自分のやりたいことがある』と確信をもつことができる人生にしてもらいたい」と訴えた。

 一方、福野社長は、「モノを売りはじめると、自然にビジネスの感覚が身についていく。スマートフォンのアプリでもいいので、自分なりに何かモノをつくって売ることが重要だ」と話し、高専生にチャレンジを促した。

 さらに、「社会をみることが大事。高専から一歩外に出ると、いろいろおもしろいものがある。好奇心があると、もっと好きなことがみつかる」と強調し、「高専時代にいろいろなモノをつくって、いろいろなモノをどんどん磨いてほしい」と語りかけた。

高専プロコンを講評する神沼靖子審査委員長
高専プロコンを講評する神沼靖子審査委員長

 最後のプログラム、閉会式で講評に立った神沼靖子審査委員長は、「何よりも重要なのはプログラミング能力。これからもプログラミングの重要性を常に頭に入れて、アイデアや作品を考えてもらえるとうれしい」とアドバイスした。

 2日間の日程を終えた高専生らは、充実した表情で帰路についた。来年の高専プロコンは、阿南高専を主管校に、徳島県で開催される予定だ。なお、BCNは、今コンテストで文部科学大臣賞に輝いた3チームを、来年1月26日に開催するBCN ITジュニア賞2018表彰式に受賞者として招待する。

(文・写真:BCN 廣瀬秀平)

2017年

10月

06日

U-22プロコン2017、10代の活躍にITの明るい未来が見える

 10月1日、東京・秋葉原の秋葉原コンベンションホールで「U-22プログラミング・コンテスト2017」の最終審査会が開催され、今年の受賞者が決定した。過去最多の応募数となる334作品から選ばれた受賞作品には、商用プロダクトに迫るハイレベルな作品ばかりが揃っていた。

 

 U-22プログラミング・コンテストは、すぐれた人材の発掘・育成を目的に、22歳以下の若者を対象に開催するコンテスト。今年で38回目の伝統あるコンテストだ。前身は経済産業省が主催する「全国高校生・専門学校生プログラミング・コンテスト」「U-20プログラミング・コンテスト」で、2014年に運営事務局がコンピュータソフトウェア協会(CSAJ)に移るとともに、対象年齢を22歳以下に拡大した。昨年は歴代最多の252作品(参加者総数770名)が集まったが、今年はさらに大きく上回る334作品(同1236名)が寄せられ、コンテストの規模・質が一層向上した。

 

 開発するソフトウェアのジャンルは問わず、IoTソリューションやプログラミング言語から、ユーティリティ、ゲームに至るまで、さまざまな作品が集まった。応募者は制作したプログラムファイル一式に加えて、実行動画、ソースコードなども提出する必要があり、これらすべてが審査の対象となる。評価ポイントは、有用性や芸術性、ビジネスの可能性などの「プロダクト」、アルゴリズムや機能性などの「テクノロジー」、独創性や将来性などの「アイデア」だ。

 

 この日の最終審査会には、8月から9月にかけて行われた事前審査と一次審査を通過した16作品が登場した。最終審査では、一般公開されている会場で制作者自らがプレゼンテーションを行い、実行委員・審査委員からの質疑に対応しなければならない。作品自体の質に加えて、見どころや技術的な工夫点をどれだけ印象づけられるかも重要になっている。

実用性・将来性にすぐれた4作品が経産大臣賞に輝く

 16作品のプレゼンテーションと最終の審査を経て、各賞の受賞作品が決定した。特に優秀な作品に授与される経済産業大臣賞は、「総合」「プロダクト」「テクノロジー」「アイデア」の4カテゴリでそれぞれ受賞作が発表された。

 

 「総合」で受賞したのは、立教新座高等学校・OMNISCIENCEチームが制作したゲームソフト「Draw Near」。漂流する宇宙船の中でサバイバル生活を行うSFゲームで、他の漂流船や惑星の探索、獲得したアイテムを使った船の拡張、3D空間での戦いなど、多くの要素をバランスよくまとめ上げた点や、クラウドを介したデータ連携によってPCでもスマートフォンでも楽しめる点など、企画・技術から完成度まで、いずれの面でも高い水準にある作品として評価された。制作には夏休み期間をほぼすべて費やしたそうで、審査委員からは2人の高校生がわずか数か月でオリジナルの本格ゲームを完成させたことに驚きの声が上がった。

審査委員長の筧捷彦早稲田大学名誉教授からトロフィを受け取ったOMNISCIENCEの2人と、作品「Draw Near」のプレイ画面
審査委員長の筧捷彦早稲田大学名誉教授からトロフィを受け取ったOMNISCIENCEの2人と、作品「Draw Near」のプレイ画面

 「プロダクト」で受賞したのは、埼玉県立越谷総合技術高校情報技術科29期生で、現在大学生の固有スキルせんたく板チームがつくった「Circuitor」。電源や抵抗、LEDなどを使ったアナログ電子回路のシミュレータで、回路をPC上で設計し、電流の向きや強さを視覚的に確認できる。チームメンバーが高校の授業で回路を組んだ際、設計を誤ってパーツを破損させてしまったことから、電子工作の初心者が実物の回路を作る前に、机上でその動作を確認できるようにと開発した。これには、「教育現場ですぐにでも使いたい」という感想が寄せられた。

「Circuitor」のプレゼンテーションを行う固有スキルせんたく板チーム
「Circuitor」のプレゼンテーションを行う固有スキルせんたく板チーム

 テクノロジーが特に高く評価されたのが、小石川中等教育学校(後期課程)・小川広水さんのプログラミング言語「scopion」だ。自分のプログラミング作業をもっとらくにしたいという動機で開発した言語で、通常は開発者が書かなければいけないコードを自動的に推論で導くなどの特長をもっている。また、単に省力化を図るだけでなく、PC上に環境を構築しなくてもクラウドにアクセスするだけで開発ができる仕組みや、継続的にソフトウェアの品質向上を図るための最新手法を導入しており、若干16歳のプログラマーがもつ視野の広さに会場は圧倒された。

小川広水さんは技術力に加え、クラウドやコンテナ技術など最新ITへの見聞の広さでも会場を驚かせた
小川広水さんは技術力に加え、クラウドやコンテナ技術など最新ITへの見聞の広さでも会場を驚かせた

 アイデアのカテゴリで受賞したのは、早稲田実業学校中等部・菅野楓さんの「narratica」。映画やドラマの脚本を入力すると、形態素分析を行い、登場人物の感情の起伏をグラフ化して表示する。菅野さんによると、大ヒットした作品にはシナリオの構成に一定のパターンがあるという。感情の起伏をデータ化することで、作家の感性だけに頼らないヒット作づくりが可能になるのでは、という思いでこのソフトウェアを制作した。ヒット作の秘密を探るため、宮崎駿監督を訪ねて教えを請うなど、チャレンジ精神も評価された。

日本からもハリウッド並みのヒット作を出したいとの思いで開発した菅野楓さんの「narratica」
日本からもハリウッド並みのヒット作を出したいとの思いで開発した菅野楓さんの「narratica」

 コンテストの実行委員長を務めるサイボウズの青野慶久社長は、参加者に向けて「応募作品のレベルが年々底上げされていると感じている。プログラミングが必修になることで、いま大人は子どもたちにどう教えていけばいいのか模索している。しかし、すでに学んでいる皆さんは、大人たちを置いていって、どんどん先に実績をつくって社会を動かしてほしい」とメッセージを送った。若者がスター開発者として活躍することが、同世代にとって何よりの刺激になる。

 

 さらに、2020年の小学校でのプログラミング必修化を受けて、今年のU-22プログラミング・コンテストは新たに小学生部門を立ち上げ、13作品にCSAJ賞を贈った。プログラミングを学び始めたばかりの子どもにもコンテストに挑戦してもらいたい、もっとプログラミングを好きになってもらいたいという思いから設けたこの小学生部門は、これからのU-22プログラミング・コンテストのさらなるレベルアップを約束する動きだ。

参加者を激励した実行委員長の青野慶久サイボウズ社長
参加者を激励した実行委員長の青野慶久サイボウズ社長

 経済産業大臣賞を受賞した4チーム/個人は、来年1月26日に表彰式を開催する「BCN ITジュニア賞2018」にノミネートされる。(文・写真:BCN 日高彰)

2017年

9月

29日

中国プログラミング教育最前線(2)青島農業大学・青島英谷教育科技

 中国山東省で日本人に最もなじみ深い都市が、ビールで有名な青島だろう。済南から高速鉄道(中国の新幹線)で2時間半と、東京からみた神戸に近い感覚だ。今回は、その青島にある青島農業大学と、大学と連携して教科書を編纂するなど、企業とのパイプ役になっている教育センター、青島英谷教育科技(英谷教育)を取材し、コンピュータ関連の教育概要や、産学連携で実践力のある人材育成の取り組みをまとめた。

農業への応用を経てIT全般の教育へ拡大──青島農業大学

 青島農業大学では、産学協同部門の責任者でIoTを専門に研究している王蕊 先生に話を聞いた。農業の情報化やトレーサビリティなどの農業のIoT、農業関連の画像処理が専門で、40人ほどが研究に取り組んでいる。最近は、シイタケをはじめとする菌類の育成環境測定や温室の環境測定など、IoT関連の研究を行っているという。

現在の青島農業大学は総合大学として幅広い学部・学科をもつ
現在の青島農業大学は総合大学として幅広い学部・学科をもつ

 大学は、農業関連の学部に加えて経済系や外国語系芸術系など、14の学部と77の学科があり、3万人の学生を擁する。その名の通り農業の専門大学としてスタートしたが、2007年に総合大学に移行した。コンピュータ関連の学部は科学情報学部で、学科はコンピュータ科学・技術学科、電子情報科学技術学科、通信工学学科、電子情報工学学科、情報・計算科学学科の五つ。学部全体でおよそ3200人の学生が在籍している。

 コンピュータ科学・技術学科はソフトウェアが研究対象。電子情報科学技術学科と電子情報工学学科はロボットやAI関連で、通信工学学科は主にIoTを研究する。情報・計算科学学科は数学を取り扱う学科で、ビッグデータ分析やアルゴリズム研究などに取り組んでいる。中心となる学科は、ソフトウェアを学ぶコンピュータ科学・技術学科。専攻科は、対日アウトソーシング、クラウドコンピューティング・ビッグデータ、移動通信の三つに分かれている。

産学協同部門の責任者でIoTを専門に研究する王蕊先生
産学協同部門の責任者でIoTを専門に研究する王蕊先生

ソフトウェア関連学科が盛ん。いまも残る対日アウトソーシング専攻

 コンピュータ科学・技術学科では産学連携での実践的な人材教育が盛んで、1年生から3年生までは大学内で過ごし、4年生になると全員が青島英谷教育科技の教育センターで実践的な教育を受け、巣立っていく。卒業生のおよそ9割が就職し、大学院に残るのは1割。就職先は、ソフトウェア開発関連が5割。ハードウェア関連が2~3割だという。

 気になるのは、対日アウトソーシング専攻だ。創設は2008年で、中国で最も早かった。当時、対日アウトソーシング対応人材への需要が大きく、他の多くの大学にも似たような学科があった。しかし近年、中国国内IT企業の成長とともに人材需要の中心が国内企業へとシフトし、現在ではほとんどの大学で対日アウトソーシングの専科はなくなった。しかし青島農業大学は、まだ残る需要に応えるために存続させている。

五つの学科を有するコンピュータ関連の科学情報学部
五つの学科を有するコンピュータ関連の科学情報学部

 AIやロボット関連の学科は開設からまだ日が浅いこともあって、教育の深さや中身がまだ整っておらず、卒業生の就職実績もほとんどない。一般に中国で学生たちが最も重視するのは就職であり、就職に関して心配がある学科はまだ学生数が少ない。

ごく平均的なレベルの青島農業大学

 青島農業大学は山東省では平均的な大学で、入学してくるのはほぼ中程度の学力をもつ学生だ。コンピュータ関連の学生は9割が山東省内から入学する。高校である程度までコンピュータの基礎知識を学び、近年そのレベルは高くなりつつある。大学では、基礎理論教育の一方で、JAVAやC#などを使ったプログラミング言語を学んでいく。

 入学直後の1年生の学習意欲は高いが、学年を重ねるとともに勉強以外のことに目が向き始め、学習意欲は下がってくる。しかし、企業から講師を招いた開く講座は人気が高い。例えば、企業の視点で何を勉強すれば将来に役立つか、という内容などで、就職に直結するとあって学習効果は高い。

 青島農業大学でのIT教育は、関連学部ができた2000年に始まった。もともと農業の研究が中心だったカリキュラムから、2007年に総合大学になり、企業と連係して実践的な教育を始めたのが2008年だった。この頃から、急速に成長する中国のIT産業に人材を供給するための教育が盛んになった。大学と教育アドバイス企業、就職先企業の三者が連携して即戦力を養成する取り組みは、中国では珍しいという。

13の大学と連携して即戦力を養う──青島英谷教育科技

青島英谷教育科技。連携する大学の4年生はこの校舎で勉強する
青島英谷教育科技。連携する大学の4年生はこの校舎で勉強する

 中国の大学教育の悩みの一つが、大学で勉強した科目が就職した後に役立たないということだ。特にIT関連では、どのような人材に企業の需要が高く、どのような技術が求められているかは日々変化する。大学はその変化を把握できないので、企業で求められていることを大学で教えることができない。このミスマッチを企業と大学の間に入って解決しようとしているのが、青島英谷教育科技(英谷教育)だ。韓敬海取締役執行役員に話を聞いた。

 英谷教育は、「使えるものを勉強しよう」という役に立つ教育の実践を掲げ、青島農業大学をはじめ山東省だけで13の大学と連携し、学生への実践的な教育に取り組んでいる。これまで1万人以上が卒業し、現在は2万人が在学している。この9月には、吉林省の25の大学と連携して年間7000人を対象に教育を開始した。来年には黒竜江省と湖南省にも連携を広げる予定だ。

青島英谷教育科技の韓敬海取締役執行役員
青島英谷教育科技の韓敬海取締役執行役員

 大学と英谷教育の連携は、学生の募集に始まり、IT関連の科目を中心とするテキストの編纂やそのテキストを利用した授業手法教育、さらに4年生を対象とする教育センターでの直接教育・企業実習のアレンジ、就職面接会の実施までを網羅する。3年生までは大学での教育をサポートし、4年生に対しては直接実践的な教育を行う。ポイントは、企業の需要に応じたカリキュラムの編成やテキストの編纂だ。独自のネットワークや就職した卒業生を情報源にしながら、企業での人材ニーズや技術ニーズをヒアリングして、その内容をテキストやカリキュラムに反映する。そしてこれを常に更新し、実践的な教育を実現する仕組みだ。

ITを中心に5分野でのユニークな取り組みが産学連携のモデルに

青島英谷教育科技が企業のニーズを盛り込んで編纂する分厚い教科書
青島英谷教育科技が企業のニーズを盛り込んで編纂する分厚い教科書

 対象の科目は、大きく分けて5分野。IoTと自動車のインターネット、AI、ロボットなどを扱う工業自動化類、ソフトウェアアウトソーシング、モバイルインターネット、ビッグデータを扱う技術化類、金融・経理、インターネット金融を扱う金融・財務類、インターネット商務、物流などを扱う電子商取引、そして英語、日本語、海外電子商取引を扱う外国語類だ。IT系の分野から金融・電子商取引などの関連分野に拡大し、さらにアウトソーシング受託に欠かせない外国語という構成だ。近く介護関連の学科も対象にする計画だ。テキストの数は60冊を数える。収益構造は、大学に対するテキスト提供と各種サポート、4年生向けの直接教育について、大学側が授業料から一定割合を英谷教育に支払うかたちになっている。

 韓取締役は、「現在の日中関係は必ずしもいいとはいえないが、両国の文化における関連性の深さを背景に、両国の連携を深めていかなければならない」と指摘。特に「IT人材が不足する日系IT企業への中国人技術者の投入や、高い技術力をもつ日本人技術者の中国市場での活躍などがより必要だ」と説く。「いずれ中国人が日本で働き、日本人が中国でも働くことがあたりまえになる」とも話した。英谷教育は、来年末の完成を目指して、3万8000㎡の敷地をもつ新キャンパスを建設中だ。加速度的に連携校を増やし、中国の産学連携で一つのモデルになりつつある。(BCN・道越一郎)

3万8000㎡の敷地に来年末完成予定の新キャンパス
3万8000㎡の敷地に来年末完成予定の新キャンパス

2017年

9月

22日

中国プログラミング教育最前線(1)山東大学ソフトウェア学院

八つの基礎をたたき込んでIT職人を輩出──山東大学ソフトウェア学院

 成長著しい中国。その勢いを象徴するのが、ファーウェイやアリババといった世界的なIT企業だ。中国全土から毎年多くの学生がIT業界での成功を夢見て就職し、めざましい成果を上げ続けている。今の中国を力強くけん引しているIT業界の人材は、どのように育てられているのか。古くから対日アウトソーシング市場で日本と関係が深い山東省を一つの例としてピックアップし、大学や関連する教育機関でコンピュータ教育に携わる人たちを取材することで、日本のコンピュータ教育のこれからと、世界最大の市場としての中国の行く末を占う。第1回は山東大学ソフトウェア学院(学部)の崔立真副院長に話を聞いた。

山東大学ソフトウェア学院の崔立真副院長
山東大学ソフトウェア学院の崔立真副院長

中国2番目の国立大学が掲げる「基礎力重視」

 山東省で最も有名な山東大学は、およそ6万人の学生を有する中国有数の総合大学だ。1902年、北京大学に続いて2番目の国立大学として誕生。山東省の省都、済南市にある6カ所のキャンパスに加え、威海と青島にもキャンパスをもつ。今回訪れたのは、済南市にあるソフトウェア学院だ。ハードウェアを扱うコンピュータ科学技術学院も同じキャンパスに位置する。トムソン・ロイターが2013年11月に発表したESI(Essential Science Indicators)によると、山東大学はコンピュータ科学の分野で世界の大学の上位1%に入り、国際的にも大きな存在だ。

 コンピュータ専門の学科が設置されたのは1979年で、40年近い歴史がある。学生数は、ハード系とソフト系、合わせて学部生が約2000人で、博士・修士課程には約700人が在籍している。専任の教員は111人で、うち教授が33人、准教授が57人、助教授が21人という布陣だ。16人がアメリカやカナダ、シンガポール、ドイツなど、海外の大学の博士号をもっている。

 山東大学は、学生の基礎的な研究開発力の育成に力を入れている。中国全土でも指折りの大学で、学生のレベルは高い。そこにコンピュータの基礎――コンパイラ原理、オペレーティングシステム、離散数学、データベース原理、データ構造、ソフトウェア工学、コンピュータネットワーク、計算機原理の八つ――をたたき込む。これらは技術がどれだけ急速に進展しても変わらないコンピュータの中核で、この理解がしっかりしていれば応用がきく。

 4年間の大学生活のうち、最初の2年は基礎を中心に学び、残り2年は具体的な研究内容を選択し、学んでいく。最近はIoTやAI、ビッグデータなどに関連するものが多いという。ファーウェイやアリババのような中国のIT先端企業では、ビッグデータ解析やスマートフォンの開発などの仕事が多く、研究内容もこれに沿った内容が多くなっている。基礎を重視しながら、4年生の前半ではほとんどの学生が企業のインターンシップに参加。就職の方向性を見定めながら実践力を身につけ、後半に卒業設計や卒論に取り組む。

山東省済南市の山東大学ソフトウェア学院
山東省済南市の山東大学ソフトウェア学院

就職先は国内IT企業がほとんどで海外は1%未満

 北京大学のような中国でトップクラスの大学の学生はたしかに優秀だが、就職率は低い。留学したり、大学院に残ったりする学生が多いのだ。しかし山東大学の学生は、学部卒業後、およそ5割が就職。企業に多くの学生を輩出する。さらに「忠誠心」や「やり遂げる力」の育成も重視していることから、就職先での離職率が低く、企業からの人気は高い。就職先はほとんどが中国国内の企業で、IBMやGoogleといった海外企業に就職する学生は1%にも満たない。最近は日系企業への就職もほとんどないという。

 山東省は早くから日本のアウトソーシング事業に取り組み、以前は日系企業への就職も盛んだった。なかでもNECは、1990年代に奨学金を出して山東大学で講座を開きながら、毎年10名以上を採用していた。この頃は中国のIT企業が立ち上がりつつあった時代で、給与も日系企業が中国の倍の水準にあった。しかし昨今の国内企業の発展で人材の需要が高まり、給与水準が逆転。NECは2006年に奨学金制度を終了し、相前後して山東大学から日系企業への就職も途絶えた。しかし、山東省での対日アウトソーシングビジネスはいまも継続していて、依然として日本語教育も盛んだ。

コンピュータ関連はハード系学科とソフト系学科の2学科。ハード系学科はまもなく青島に移転する
コンピュータ関連はハード系学科とソフト系学科の2学科。ハード系学科はまもなく青島に移転する

大学での一つの目標がACM-ICPCでの好成績

 山東大学では、プログラミング学習の一つの目標として、ACM-ICPC(国際大学対抗プログラミングコンテスト)の決勝大会への進出を掲げている。ACM-ICPCはプログラミングと問題解決能力を競う世界大会で、アメリカのACM(Association for Computing Machinery)が主催し、IBMが20年以上にわたってサポートしている。大学ごとに3人一組のチームが出場。全世界で3万人を超える学生が参加する大きな大会で、国別で勝ち上がった大学がエリア別の大会に出場。各エリアを代表する出場校を選出し、主にアメリカで決勝が行われる。山東大学はこのアジア大会で優勝した経験があり、2008年にアメリカでの決勝大会に進出した。結果は47位だったが、2011年にも決勝進出を果たしている。

 中国の若年者向けコンピュータ教育には、いまのところ日本のように小学生から教えるような計画はない。高校までは、大学受験のための勉強が主体だ。しかし最近は、中学や高校でもコンピュータやソフトウェア開発の基礎を教えるようになってきた。興味があればプログラミングコンテストなどに参加することができ、そこでよい成績を収めると大学入試に有利に働くこともある。

ビッグデータやIoT、AIの研究が盛ん

 山東大学は、政府支援の研究所として、国立電子商取引技術研究所や暗号・情報セキュリティ研究所、デジタルメディア技術研究センターなどを擁する。また政府や企業から、さまざまなかたちで年間2000万元(日本円でおよそ3億5000万円)の補助金が支出されている。研究の成果は、社会保障や公衆衛生、交通管制、電力事業など、政府に貢献するソフトウェア製品に広く活用されている。

 直近の研究成果としては、コンピュータグラフィックスと可視化の分野では、大都市のモデル化やシミュレーション・可視化、アニメ制作に利用する大規模並列レンダリングシステム、デジタル・マルチメディアプレゼンテーション生成、大気汚染のモニタリング・可視化など、またビッグデータ解析では、SNSを使った意見解析と感情分析(ユーザーの製品評価にもとづく売上予測モデル)などがある。

 基礎を重視しつつも、インターンシップを通じて企業のニーズに応じた実践力を身につけ、中国IT業界のトップランナーを送り出す――それが山東大学ソフトウェア学院だといえるだろう。
(BCN・道越一郎)

2017年

9月

14日

寄贈PCを活用して水戸工業高校でLinuxインストール講座開催

 

 ITジュニア育成交流協会は、毎年、企業で使っていた中古パソコンを高校のIT系クラブ活動に寄付していただくリユースPC寄贈斡旋事業を行っている。これは、使用に若干の制限がある学校備品のパソコンではなく、一人1台の環境で自由に使うことのできるパソコンを企業から直接贈ってもらう活動だ。昨年度は、活動に賛同する協力企業4社から、全国の4校に計56台のノートPC/デスクトップPCを贈っていただいた。

 寄贈されるパソコンは、データはもちろん、ソフトウエアライセンスの規約からOSも消去されているので、そのままでは使用できない。そこで協会では、パソコンの寄贈と同時に、提携するNPO法人LPI Japanの寄付講座「学生向けLinux/OSS体験セミナー」を紹介している。

 これはLPI Japanが社会貢献活動として無償で提供している講座。企業から寄贈されたパソコンにOSSのLinuxをインストールすることで、OSの基礎を学びながら、その後も継続してパソコンを利用できるようにする。

 今回、この講座を受講した茨城県立水戸工業高校には、情報通信提供サービス事業を手がけるネクスウェイとパソコン専門店を展開するドスパラから、計20台のノートPCが贈られた。これを手に講座に参加したのは情報技術科の1年生17人で、その多くがクラブ活動の工業技術部・マイコン部に所属している。

講師の二人は生徒の間を回って、わかりやすく指導
講師の二人は生徒の間を回って、わかりやすく指導

 講師を務めるのは、Linuxの株式会社GOOYAの藤木信明さんと株式会社ゼウス・エンタープライズの鯨井貴博さん。お二人ともITエンジニア育成のエキスパートだ。10時半に始まった講座はLinuxの説明から入り、午前中にはLinuxの一つ、CentOSのインストールを終了。午後はオペレーション編としてコマンド入力やシステム構築、ウェブサーバの構築などについて学んだ。

講座修了後にパチリ。講師の藤木信明さん(前中央)と鯨井貴博さん(左)とともに
講座修了後にパチリ。講師の藤木信明さん(前中央)と鯨井貴博さん(左)とともに

 生徒を指導するマイコン部顧問の中島智広先生は、「OSがどんなものなのか、わかりやすく学ぶことができた」と成果を語り、生徒たちも「LinuxとWindowsの違いがよくわかった」「とてもわかりやすい講義だった」という声が上がっていた。

当日は別教室で高校生ものづくりコンテスト測量部門の関東大会が開催されていた
当日は別教室で高校生ものづくりコンテスト測量部門の関東大会が開催されていた

2017年

8月

31日

三重にU-16プロコンの波、鳥羽商船高専で事前講習会を開催

 三重県にU-16プログラミングコンテストの波がやってきた。10月22日、国立鳥羽商船高等専門学校で、作品部門のU-16プログラミングコンテストが開催される。これに先立って、夏休み期間中の小・中学生を対象に鈴鹿高専と鳥羽商船高専で事前講習会が開催された。

 2011年に北海道旭川市で始まった16歳以下の子どもたちを対象にしたプログラミングコンテスト=U-16プロコンには、対戦型ゲームでプログラミングの技術を競う競技部門と、CGやウェブページ、プログラムなど、自由に作成したデジタル作品を審査員が評価する作品部門がある。昨年12月に第1回を開催した愛媛県松山市のU-16プロコン松山大会は競技部門で腕を競ったが、三重大会はこれまで実績を積み重ねてきたデジタル作品づくりで、プログラミングに親しんでもらう。

会場の国立鳥羽商船高等専門学校(三重県鳥羽市)
会場の国立鳥羽商船高等専門学校(三重県鳥羽市)

 鳥羽商船高専は、夏休みに地域の小・中学生に科学・技術やものづくりを体験してもらおうと、毎年、公開講座「サイテクランド in 鳥羽商船高専」を開催している。3年前には、このなかにシングルボードコンピュータ「IchigoJam」を使って実際にゲームやアプリをつくる講座「いちごジャムでマイコンプログラミング」を設けて、子どもたちにプログラミング体験を提供してきた。

 

 今年はプログラミング体験だけではなく、「秋のコンテスト」という目標を置いて、U-16プログラミングコンテスト三重大会の事前講習会として開催。講師陣に学生を加え、「プログラミングを学ぶ先輩たちが後輩の小・中学生を教える」「講習会の後、秋のコンテストまで、参加者から要望があれば先輩たちが中学校などに“出前講習”に行く」など、U-16プログラミングコンテストの名にふさわしいかたちに進化した。学生たちを指導する制御情報工学科・江崎修央教授は、「講師役で参加する学生や出前講習のかたちなどは、あまり型にはめずに緩やかに考えていく」という。8月25・26日に開かれた鳥羽商船高専での事前講習会では、三重県でプログラミングを楽しく学ぶ場を子どもたちに提供するPCN三重の岡村康子さんが講師を務め、チューターとして制御情報工学科2年生の女子学生5人が子どもたちの間を回って指導にあたった。

チューターを務めた制御情報工学科2年生の通称「IchigoJamガールズ」と制御情報工学科の中井一文准教授(左奥)
チューターを務めた制御情報工学科2年生の通称「IchigoJamガールズ」と制御情報工学科の中井一文准教授(左奥)
講師の岡村康子さん
講師の岡村康子さん

 参加したのは、2日間合わせて小学生32人、中学生15人の計47人。すでに過去の講座でプログラミングの経験がある子どももいる。講座は、講師とチューター5人の紹介、身の回りにあるコンピュータの話から入り、IoT、プログラムの役割、プログラミングを学ぶことの意味などをやさしく説明していく。目の前に置かれたIchigoJamの電源を入れる頃には、子どもたちの集中力が高まっているのがわかる。

5人の2年生が参加者を回って指導する
5人の2年生が参加者を回って指導する

 そこからは、ミニゲームをつくったり、LEDの動作を試したりする実際のプログラミングだ。そして加速度・赤外線・測距・ジョイスティックという四つのセンサのうち一つを使って、自分だけの作品を考え、つくっていく。昼休みをそこそこに切り上げて作品づくりに取り組む子どもがほとんどで、最後は全員が自分の作品をプレゼンテーションして、一日のプログラムを締めくくった。

自分の作品をみんなの前でプレゼンテーション
自分の作品をみんなの前でプレゼンテーション

 もともと「いちごジャムでマイコンプログラミング」が公開講座として地域に浸透していたことや、事前に関係機関と話し合いを重ねたことで、U-16プロコン三重大会は三重県、伊勢・鳥羽・志摩・鈴鹿の各市教育委員会、鳥羽商工会議所の後援と、さらに民間企業5社の協賛を得ている。この連携が単にU-16プロコンにとどまることなく、地域のプログラミング教育やICT教育に非常によい循環をもたらしつつあることは、特筆に値する。実は事前講習会の前日、24日には、伊勢市教育研究所と鳥羽商船高専の共催で「教職員プログラミング講座」が開催され、30名を超える小・中学校の教員が参加した。

 

 伊勢市教育研究所の出口晃ICTアドバイザーは、「2020年の学習指導要領改訂で、小学校でのプログラミング教育が始まる。これまでプログラミング経験のない現場の教員たちは、『自分にできるだろうか』という漠然とした不安を感じている。こうした不安を払拭するため、またプログラミングのおもしろさに触れてもらうためにこの講座を開講した」と語る。講座では、プログラミングの基礎を学んだあと、プログラミングロボット教材のLEGO マインドストームやIchigoJamを使ったプログラミング体験に取り組んだ。

鳥羽商船高専制御情報工学科の江崎修央教授
鳥羽商船高専制御情報工学科の江崎修央教授

 講師を務めた江崎教授は、「プログラミングを『キーボードを叩いてコードを書いていくこと』と思い込んでいた先生たちが、プログラミングの考え方を学び、実際に動作を体験すると、『こういうものなのか』と納得してくれた。わからないこと、困ったことがあったら相談できる支援体制を構築したい」と語る。地域に頼もしいプログラミング教育のネットワークが構築されることで、三重の小・中学生=ITジュニアの卵たちは大きく成長していくことだろう。U-16プロコンが、その核となって機能していくことは間違いない。

 

                                                                (文・写真:ITジュニア育成交流協会 市川 正夫)