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2018年

10月

10日

山梨では12月に本大会、U-16プロコン事前講習会を甲府で開催

 9月29日、山梨県甲府市の甲府工業高校で、第1回U-16山梨プログラミングコンテスト(U-16プロコン山梨大会)競技部門の事前講習会が開催された。当日は台風24号の接近で激しい雨が降る。

会場の山梨県立甲府工業高校
会場の山梨県立甲府工業高校

山梨県立都留興譲館高校の工学研究部が協力

 U-16プログラミングコンテスト(U-16プロコン)は、パソコンやプログラミングに興味をもつ子どもたちに活躍の場を提供するとともに、これまでプログラミングを学んだことのない子どもたちの将来の可能性を広げようとする学びの場として、2011年に北海道旭川市で始まった。小・中学生と高校1年生を対象に、対戦型ゲームプラットフォーム「CHaser」を使用する競技部門と、ゲームやグラフィクスなど、自由に作成したデジタル作品を競う作品部門で開催される。

 U-16プロコンは、「プログラミングを学んでいる高校の生徒や高等専門学校の学生が後輩たちを指導する」「『子どもたちの未来をつくる』という志をもつ大人たちが、ボランティアで運営を支える」「将来の地域をつくる人材を育て、地域を発展させる」という、すばらしい仕組みと理念をもっている。U-16プロコン山梨大会は、この理念と仕組みに共感したNPO法人山梨ICT&コンタクトセンターが中心になって実行委員会(金成葉子委員長)を結成。山梨県高等学校教育研究会工業部会の協力を得て、会場を甲府工業高校に、そして講師・チューターに3年前の全国高校生プログラミングコンテストを制するなど、IT系コンテストの強豪校である都留興譲館高校(旧谷村工業高校)工学研究部の先生・生徒を招き、12月8日の本大会開催を目指して取り組んでいる。

 当日のしの突く雨と、もともと夏休みに開催する予定だった講習会が9月にずれたことで、受講者は小学校5年生、中学校3年生、中学2年生の3人。それでも「pythonでアプリやゲームをつくっている」という子どもがいるなど、少数精鋭だ。残念ながらチューター役の都留興譲館高校工学研究部の生徒たちは学事日程で欠席。講師には工学研究部顧問の卯月英二教諭が立った。

会場は充実した設備を備えた第2コンピュータ室
会場は充実した設備を備えた第2コンピュータ室

 講習会は、受講者が少なかったことで、結果として講師の卯月教諭や甲府工業高校電子科の伊東雅人教諭が参加者の間を回り、一人ひとりの進捗を確認しながら前に進むという行き届いた指導で、内容の濃いものになった。最後に、相手のキャラクタの上にブロックを落として勝つ「プット勝ち」のプログラムを書いて、勝利の余韻を味わったところで講習は終了。この後、12月の大会まで、受講者はメールなどで都留興譲館高校工学研究部の生徒たちによる指導を受けることができる。

結果として、受講者一人ひとりにていねいな指導ができた。マウスを握るのが卯月英二教諭
結果として、受講者一人ひとりにていねいな指導ができた。マウスを握るのが卯月英二教諭

 U-16山梨プロコン実行委員会は、12月8日に向けて、事前講習会受講者のプログラミング学習をフォローするとともに、さらに大会参加者を募っていく。

(文・写真:ITジュニア育成交流協会 市川正夫)

2018年

9月

26日

自分が生んだAIに自分の仕事を奪われる……子どもと科学を考えるシンポジウム、池上彰氏も登場

 科学技術振興機構(JST)と日本科学オリンピック委員会は9月17日、東京都・文京区の東京大学 伊藤謝恩ホールで「『国際科学オリンピック日本開催』シンポジウム」を開いた。これから2023年までの間、世界の中高生が科学の力を競う国際科学オリンピックが日本で相次いで開かれる。こうした中、当日は科学オリンピックに興味を持つ子どもたちやその保護者を中心におよそ400名が集まった。シンポジウムでは、講演やパネルディスカッション、ワークショップ、サイエンスショーを通じて、科学する心の楽しさ、意義などを伝えた。

プログラミングで最も大事なのは、コーディング以前のアルゴリズム

 冒頭、9月8日に閉幕した第30回国際情報オリンピック日本大会で組織委員会委員長を務めた古川一夫氏が講演。日本代表選手が金メダル1個、銀メダル1個、銅メダル2個と全員メダルを獲得した結果を報告した。続いてPreferred Networks 執行役員の秋葉拓哉氏が登壇。「情報オリンピックに出場して」と題して講演した。06年にメキシコ・メリダで開催された第18回国際情報オリンピックに日本代表として出場した経験をもとに子どもたちに語りかけた。

 プログラミングの世界大会に10回以上出場した経験をもつ秋葉氏。競技プログラムを志す若者のバイブルとして、表紙のイラストから「アリ本」呼ばれて親しまれている『プログラミングコンテストチャレンジブック』の著者の一人でもある。講演では「大会に出て、プログラミングよりも数学的なアルゴリズムのほうがはるかに重要だということに気づかされた。多くのライバルに出会って切磋琢磨することもできた。情報オリンピックは決して天才向けのコンテストではなく、とても簡単なところから誰でも参加できる。たとえメダリストになれなくても挑戦する価値は大きい」と話した。

シンポジウムには、科学に興味をもつ子どもたちをはじめ400名が参加した
シンポジウムには、科学に興味をもつ子どもたちをはじめ400名が参加した

日本の科学は大丈夫なのか……

 パネルディスカッションでは、冒頭に講演した2名に加え、第39回国際化学オリンピック銅メダリストで東京大学助教の廣井卓思氏、第18回国際生物学オリンピックで銅メダルを獲得し、現在富士通でデジタルマーケティングを担当する本多健太郎氏、さらにモデレーターとしてジャーナリストの池上彰氏が登場。「池上彰さんと考える日本の科学と君の未来」と題して議論を交わした。まず池上氏は「好きなことを学ぶ、という事はとても大事」と話しながら、「今日本の科学は大丈夫なのかという危機感がある。ノーベル賞受賞者ランキングで日本は世界7位にとどまり、博士号取得者は減ってきている。論文の被引用回数が各分野で上位10%に入る論文『トップ10%論文』のシェアも中国に抜かれている状況」として、パネラーに科学の重要性や役割について意見を求めた。

日本の科学は大丈夫なのかと、問題を提起するジャーナリストの池上彰氏
日本の科学は大丈夫なのかと、問題を提起するジャーナリストの池上彰氏

 古川氏は「現在、米国発のGAFA(Google Apple Facebook Amazon)に付加価値が集中している。日本からもこうした企業が生まれてほしい。そのためには、大企業の集団的な力ではなく、天才的な若い人の力が必要。社会として、そうした人たちを育てていく環境も重要だ。優れた人材をもっとリスペクトする文化の醸成も不可欠。産業界は四半期単位で業績を問われる。もっと中長期的な視点で、産業の革新性に取り組んでほしい。私は45年にちょうど100歳を迎える。AIが人間を超えるシンギュラリティのポイントと言われている年だ。しかし実際、そういうことはまず起こらないと思う。人間に備わっている思考力や疑問を思う力を、AIが担うことはできないからだ。シンギュラリティが来るのか来ないのか、そこまで生きて確かめたい」と話した。

日本の科学の発展のためには天才的な若い人の力とそれを育てていく社会が不可欠と語る 古川一夫氏
        日本の科学の発展のためには天才的な若い人の力と        それを育てていく社会が不可欠と語る 古川一夫氏

AIができないことは、人間ならではのクリエイティビティ

 秋葉氏は「実際にAIを研究開発しているが、すでに深層学習の研究開発の一部が自動化されつつある。例えば、ニューラルアーキテクチャーサーチと呼ばれている技術もその一つ。人間よりもいいものが作れるようになってきた。つまり深層学習の研究者は、自分たちが作った技術でAIに一部の仕事を奪われているわけだ。しかし、クリエイティビティはAIではまかなえない。目的がしっかりしているものには適応しやすいが、ふわっとしているものは苦手。将棋が人間を越えたのはずいぶん昔。しかし囲碁はつい最近だ。理詰めだけでなく『形の良し悪し』を認識するのは、AIにとって難しい。ひらめきや、おもしろさも同じ。人間はそこで能力を発揮していけばいい。科学の世界はとても奥深い。どれだけ時間を使ってもやりすぎるということはない。何よりも大事なのは熱意。まずは熱中できることを見つけて、それを続けほしい」と話した。

何よりも大事なのは熱意。まずは熱中できることを見つけてと語る 秋葉拓哉氏
何よりも大事なのは熱意。まずは熱中できることを見つけてと語る 秋葉拓哉氏

 本多氏は「科学は身近で素朴な『なぜだろう』という疑問から始まる。機械では得られない発想だ。ここから自分でやってみたいと思ってスタートする研究にはエネルギーが沸く。そういうエネルギーをもつ人が創り出したものはすごい。今感じていることを大切にして取り組み続けること、そして、周りの人たちがそれを支えていくことが大事。科学こそ、より良い社会を創り出す根本的なエネルギーだと思う。また、自然の現象や不思議だと思ったことに対して、常に謙虚な気持ちでいてほしい。勉強を進めると分かった気になってしまうが、その先にもっと深いものが無限に続いているからだ。保護者の方々は、子どもが不思議だなと思って興味を持っていることに対して、学校の成績や就職、進学に直接関係なくても、背中を押してほしい。日本の社会や科学技術が元気を取り戻すにはそういう力が必要だ」と話した。

学校の成績や就職、進学に関係なくても、子どもの「なぜ」を大事にしてほしいと語る 本多健太郎氏
        学校の成績や就職、進学に関係なくても、           子どもの「なぜ」を大事にしてほしいと語る 本多健太郎氏

 廣井氏は「安室奈美恵の引退はとても悲しいが、彼女の歌が何か役に立つのか、と聞く人はいない。昨年、時間と空間のゆがみ「重力波」の観測がノーベル賞を受賞した。しかし『重力波は役に立つのか』というのは愚問だ。重力波が検出されたことそれ自体にワクワクする。これが科学の原点だ。損得勘定を抜きに、とにかく楽しいという事だけで研究を進めていくのが科学の姿。何かを付け足すことは、機械でもできるだろう。しかし『全く新しいところに一つ石を置く』『新しいアイディアのタネをつくる』ようなことは人間にしかできない。タネを育てるのはAIにやらせればいい。また、やるかどうか迷ったらやることが大事。とにかくやってみる。失敗してもいい。挑戦してみて初めて自分が何に向いているかが分かる」と話した。

新しいアイディアのタネをつくるようなことは人間にしかできないと語る 廣井卓思氏
新しいアイディアのタネをつくるようなことは人間にしかできないと語る 廣井卓思氏

 池上氏は「AIは改良することはできるが、全く新しいことを始める事はできない。今上天皇の教育責任者だった経済学者、小泉信三は『すぐ役に立つことはすぐに役に立たなくなる』と言った。今役に立つことだけやっていたら発展はない。疑問や驚きを大事にして科学する心を培ってほしい」と結んだ。

問題を解いて、アルゴリズムを体験

 シンポジウムの後半は、サイエンスショーやワークショップで具体的に科学の楽しさをアピール。特に中高生を対象に開いたワークショップでは、情報、生物学、化学の各コースに分かれ、実際に問題を解きながらそれぞれの世界の片鱗に触れることができた。「プログラミングって面白い」と題して開かれた情報コースのワークショップでは、プログラムの前に重要なアルゴリズムについて学んだ。

情報のワークショップでは、トランプや路線図をもとにして良いアルゴリズムを身をもって体験
情報のワークショップでは、トランプや路線図をもとにして良いアルゴリズムを身をもって体験

 取り組んだのはシャッフルしたトランプを順番に並び替える時、どんな方法が最も楽かという課題や、複雑な路線図をもとに移動する際に、目的地まで最短時間で着くルートをどうやって探すのか、といった課題。コンピューターを一切使わず、紙と鉛筆だけでアルゴリズムとは何かを体験した。(BCN・道越一郎)

情報オリンピックOBの先輩が、課題の解き方をサポート
情報オリンピックOBの先輩が、課題の解き方をサポート

2018年

9月

19日

高専プロコン開幕まであと40日! ラストスパートに腕を撫す

 全国高等専門学校第29回プログラミングコンテスト(高専プロコン)は、阿南工業高等専門学校を主管校に、10月27・28日、徳島市のアスティ徳島で本選が開催される。大会のテーマは「ITの未来はここにあるでないで!」だ。ちなみに「あるでないで」とは、徳島の方言、阿波弁で「あるじゃないか」の意。

 高専プロコンは、高専の学生たちが日頃の学習成果を生かしてIT分野のアイデアと実現力を競う場だ。与えられた課題に従って作品をつくる「課題部門」、自由なテーマで独創的な作品をつくる「自由部門」、与えられたルールの下でチーム同士が戦う「競技部門」がある。今年の課題部門は、高専が教育目標の一つに掲げる「地域貢献」をテーマにした新たな課題「ICT を活用した地域活性化」が出題された。また競技部門は、第26回長野大会から3年続いたパズルゲームが、今回、陣取りゲームに衣替え。3人一組のチームでマス目に区切ったフィールドで、いかに多くの陣地を占有するかを競う。

 5月の締め切りまでに、課題部門に41高専から56作品、自由部門に40高専から52作品、競技部門に60高専(キャンパス)からの応募があり、6月に行われた書類審査による予選で、課題部門20作品、自由部門20作品、競技部門59作品が本選出場を決めた。さらに、今年で競技部門が25回目を迎えることを記念して行われる「競技アイデア募集企画」は、OBチームも含めて10作品が予選を通過し、本選に臨む。

 高専プロコン本選に出場するチームは、いまの時期、本選当日に向けて毎日作品の仕上げとプレゼンテーションの練習に励んでいる。10月27・28日、お近くの方はぜひ足を運んで、高専生たちの発想する力とそれを実現する力をご覧いただき、また競技部門で繰り広げられる熱い闘いを楽しんでいただきたい。
(ITジュニア育成交流協会 市川正夫)

2018年

9月

13日

小中高校生のロボコンWRO、金沢で決勝大会、13組がタイ大会に進出決める

 WRO(World Robot Olympiad) Japanは9月9日、「第15回 WRO Japan 2018 決勝大会 in 金沢」を石川県金沢市の医王山スポーツセンターで開催。全国から地区予選を勝ち抜いた小学生から高校生までの130チーム・390名が集まり熱戦を繰り広げた。

競技エリアでは競技の前に試走させてプログラムや本体を調整することができる
競技エリアでは競技の前に試走させてプログラムや本体を調整することができる

 自律走行ロボットで戦うレギュラーカテゴリーのうち、難易度の高い国際ルールに基づいて実施するのがエキスパート競技。小学生、中学生、高校生と部門が分かれており、それぞれの優秀チームが日本代表に選ばれる。例えば高校生部門では、ロボットが船に食糧を積み込み、その上に保温用の蓋を乗せた後にゴールするという課題だ。複雑なミッションだけに、完璧にクリアするチームが少ない中、優勝した奈良県の高校生二人組チーム「analyzer Λ(ラムダ)」はスピーディーかつ完璧にミッションをこなした。競技中「よし、よし」とロボットに気合いを入れるように動きを追いかける姿が印象的だった。

優勝した奈良県の高校生二人組チーム「analyzer Λ」のスタート場面
優勝した奈良県の高校生二人組チーム「analyzer Λ」のスタート場面

 WROは、市販されているロボットキットを使い、自分たちでロボットを組み立て、自分たちで走行プログラムを書き、自律走行させてその精度やゴールまでの時間を戦う。およそ横1m、縦2mのコース上に、目印になる線が引かれ、オブジェクトと呼ばれる複数のブロックを配置。ロボットを走らせ、課題に沿ってブロックを特定の場所に再配置するなどして指定された場所にゴールさせる。ブロックを引っかけたり押し出したりする機構をロボットに実装し、プログラムを書いてコントロールする。スタートするとあとはロボットまかせ。手を触れることもできなければ、無線で操作する事もできない。

小学生も熱心に参加。チームで力を合わせてロボットを組み立てる
小学生も熱心に参加。チームで力を合わせてロボットを組み立てる

 プログラミングは、ロボットの動作が定義されたアイコンをPCの画面上でつなげていくだけで組むことができる。しかし現物のロボットを動かすため、コース上のわずかな凹凸やモーターの出力のばらつきなど、物理的な環境にも影響され微妙に動きが変わってしまうことがある。そうした誤差を乗り越えてどうやって課題をクリアしていくか、柔軟な発想も求められる。(BCN・道越一郎)

アイコンをつなぎ合わせることで、プログラムをつくっていく
アイコンをつなぎ合わせることで、プログラムをつくっていく

2018年

9月

10日

日本代表、金1銀1銅2と全員メダル獲得、国際情報オリンピック表彰式

 世界中の中高生がプログラミングで戦う国際オリンピック、第30回国際情報オリンピック日本大会(IOI 2018 JAPAN)の閉会式・表彰式が9月7日、茨城県つくば市のつくば国際会議場で開かれた。総合優勝には、優勝候補として呼び声の高かったアメリカのBenjamin Qi選手が輝いた。日本代表選手では、北九州工業高等専門学校3年の井上航選手が金メダルを獲得した。

総合1位を獲得したアメリカのBenjamin Qi選手
総合1位を獲得したアメリカのBenjamin Qi選手

 日本初開催の今回は87の国と地域から335名の選手が参加。9月3日と5日の2日間、計10時間に亘って6つの難問に挑んだ。ルールでは参加上位12分の1までの選手に金メダルが与えられ、以降一定の比率で銀、銅メダルが与られる。

 井上選手に続く銀メダルには灘高等学校3年細川寛晃選手選手、銅メダルにはN高等学校3年の清水郁実選手、筑波大学附属駒場高等学校2年の行方光一選手が輝き、代表選手4人全員がメダルを獲得した。`また、公式記録の対象とはならないが、開催国に認められる特別枠で参加した選手も大健闘。「金メダル相当が筑波大学附属駒場高等学校1年の米田優峻選手、銀メダル相当が開成高等学校1年の米田寛峻選手、灘高等学校1年の平木康傑選手、銅メダル相当が京都市立堀川高等学校3年の岸田陸玖選手と好成績を収めた。」

金メダルを獲得した日本代表の井上航選手選手
金メダルを獲得した日本代表の井上航選手選手

 金メダルを獲得した井上選手は「1日目の問題『座席』が思いのほか難しく、満点を狙いに行ったのがやや失敗だった。2日は完ぺきだった。金メダルが獲れてほっとしている」と話した。来年31回目を迎える次回のIOI 2019は、アゼルバイジャンの首都バクーで開催される。(BCN・道越一郎)

2018年

9月

07日

10時間の死闘を経て井上選手が金メダルほぼ確定! 国際情報オリンピック本戦終える

 世界中の中高生がプログラミングの技を競うオリンピック、第30回国際情報オリンピック日本大会(IOI 2018 JAPAN)が9月5日、熱戦の幕を閉じた。総合1位は600点満点中499点を獲得した米国のBenjamin Qi選手、2位は469点で中国のMaolong Yang選手、3位も466点で中国のZhenting Zhu選手という結果になった。日本人選手でトップは北九州工業高等専門学校3年の井上航選手で、428点を獲得し総合6位タイにつけた。また、特別参加選手ながら筑波大学附属駒場高等学校1年の米田優峻選手が362点で17位タイにつけ、大健闘した。

日本選手団トップは428点で総合6位を獲得した北九州工業高等専門学校3年の井上航選手
日本選手団トップは428点で総合6位を獲得した北九州工業高等専門学校3年の井上航選手

 IOI 2018 JAPANの本戦は3日と5日の2日間、計10時間にわたって行われた。今大会では87の国と地域から342名の若きプログラマーが参加。メダルの授与は、上位12分の1の選手に金メダル、以下12分の2までの選手に銀メダル、12分の3までの選手に銅メダルというルールで、正式結果は9月7日の表彰式で発表される。

熱戦の模様はウェブサイト上で公開された。戦いが終わった9月5日14時11分時点での順位と得点
熱戦の模様はウェブサイト上で公開された。戦いが終わった9月5日14時11分時点での順位と得点

 1日目の問題は、秘密のコマンドを探し出す「コンボ(combo)」、人間の姿と狼の姿をもつ狼男が人目につかないように旅行する方法を探る「狼男(werewolf)」、国際プログラミングコンテストの座席表の美しさを計算する「座席(seats)」の3問。多くの選手が「座席」で苦戦した中、優勝した米国のBenjamin Qi選手だけが唯一100点満点を獲得、他の問題も満点で1日目を300点満点で折り返した。

本戦会場での練習風景。このような配置で342名の選手が2日間・10時間にわたり熱戦を繰り広げた
本戦会場での練習風景。このような配置で342名の選手が2日間・10時間にわたり熱戦を繰り広げた

 2日目は、人形を動作させる回路を組んでいく問題「からくり人形(doll)」、高速道路の交通量と料金を計算する問題「高速道路の通行料金(highway)」、山で開催する会議費用を最小にする問題「会議(meetings)」3問が出題された。初日より難しい問題だったようで2日目の最高点は250点にとどまった。優勝したBenjamin Qi選手は1日目のアドバンテージを生かして、無難に点数を積み上げ、2位と30点差で優勝を勝ち取った。また、中国選手は2位と3位につけたほか6位、24位にも位置しており、全員が金メダルの水準で戦いを終えた。(BCN・道越一郎)

2018年

9月

04日

国際情報オリンピックが開幕、秋篠宮佳子さまがお言葉、大会初日で満点の選手が!

 87の国と地域から341名の中高生が一堂に会しプログラミングの腕を競う第30回国際情報オリンピック日本大会(IOI 2018 JAPAN)が茨城県つくば市で開幕した。つくば国際会議場で9月2日開かれた開会式には秋篠宮佳子さまもご臨席。セレモニーはすべて英語で行われるのにあわせ英語でスピーチされた。


 佳子さまは「情報科学は技術革新に不可欠です。このIOIをきっかけとして若い人たちの関心を呼び起こすことを期待しています。選手の皆さんは、もしかするとすでにネット上では知り合いかもしれません。しかし実際に対面して話し合うのはすばらしいことです。お互いのコミュニケーションを楽しみ、経験を共有して友情を深めてください。皆さんがこのIOIで最善を尽くすことを願っています」とお言葉を述べられた。

IOIをきっかけとして若い人たちの関心を呼び起こすことを期待していますとお言葉を述べられる、 秋篠宮佳子さま
IOIをきっかけとして若い人たちの関心を呼び起こすことを期待しています    とお言葉を述べられる、 秋篠宮佳子さま

 開会の挨拶で壇上に立った第30回国際情報オリンピック日本大会組織委員会の古川一夫 委員長は「30回目と節目の大会の今回、日本で初めての開催を実現し、87の国と地域から選手団を迎えることができた。情報技術で才能あふれる選手諸君が、このオリンピックで本来の実力を発揮してほしい。そしてゆくゆくは、次世代の情報社会を皆さんが世界でけん引してほしい」と話した。

開会の挨拶を行った、第30回国際情報オリンピック日本大会組織委員会の古川一夫 委員長
開会の挨拶を行った、第30回国際情報オリンピック日本大会組織委員会の古川一夫 委員長

 また来賓として挨拶に立った林芳正 文部科学大臣は「AIやIoT、ビッグデータなど、技術が急速に進展している現在、社会を大きく変える原動力は情報科学技術だ。大会に参加する選手諸君は国際社会が抱える問題の解決に必要な技術を生み出していく可能性を秘めている。今大会の経験を生かし、将来の科学技術をけん引する人材に育って欲しい」と話した。

将来の科学技術をけん引する人材に育って欲しいと話す、林芳正 文部科学大臣
将来の科学技術をけん引する人材に育って欲しいと話す、林芳正 文部科学大臣

 開会式後半では、アルゼンチンから国名のABC順に代表選手団をスクリーンに映しながら紹介。1か国あたり選手4名、コーチ2名までの参加が認められているが、コーチと選手2名で参加しているトルクメニスタンやベネズエラの選手にはひときわ大きな拍手と歓声があがった。

 最後に紹介されたのが日本選手団。代表選手4名と開催国に与えられた特別参加枠の選手4名も加えた計8名の選手と、2人のコーチにも大きな拍手と歓声が贈られた。

選手紹介でひときわ大きな拍手をと歓声を浴びた日本選手団
選手紹介でひときわ大きな拍手をと歓声を浴びた日本選手団

 今回の日本代表選手は、北九州工業高等専門学校3年の井上航 選手、N高等学校3年の清水郁実 選手、筑波大学附属駒場高等学校2年の行方光一 選手、灘高等学校3年の細川寛晃 選手の4名。また、特別参加選手は、京都市立堀川高等学校3年の岸田陸玖 選手、灘高等学校1年の平木康傑 選手、開成高等学校1年の米田寛峻 選手、筑波大学附属駒場高等学校1年の米田優峻選手の4名だ。また、問題の翻訳などで選手をサポートするコーチ陣は、東京大学工学部計数学科4年の小倉拳 団長、筑波大学情報学群情報科学類3年の松崎照央 副団長の2名。総勢10名の選手団となる。

今回の日本代表選手とコーチ
                   今回の日本代表選手とコーチ                        (左から、松崎照央 副団長、細川寛晃 選手、行方光一 選手、清水郁実 選手、井上航 選手、小倉拳 団長)

 「IOI 2018 JAPAN」の全日程は9月1日から8日までの8日間。実際の競技は3日と5日の2日間に渡って行われる。

 問題は1日3問ずつの合計6問。5時間ずつ計10時間かけて戦う。C++、Pascal、JAVAのいずれかでプログラムを組み、問題を解いていく。配点は1問につき100点。回答を間違えてもペナルティーなどはなく、計600点満点で点数の高さのみを競う。問題ごとにプログラムが回答を出すまでの制限時間が設けられており、使用できるメモリにも制限がある。より効率的なアルゴリズムによって問題を解くと高い点数が与えられるため、「力業」ではなく、より「エレガント」なプログラミングが求められる。

競技初日を前日に控えた2日、本番と同じ会場で練習問題を使って行われた予行演習
競技初日を前日に控えた2日、本番と同じ会場で練習問題を使って行われた予行演習

 1日目の問題は、秘密のコマンドを探し出す「コンボ(combo)」、人間の姿と狼の姿をもつ狼男が人目につかないように旅行する方法を探る「狼男(werewolf)」、国際プログラミングコンテストの座席表の美しさを計算する「座席(seats)」の3問。コンボは多数の選手が100点満点を獲得し、比較的簡単だったようだが、狼男はやや難しく、座席は100点満点は1名のみだった。

 1日目の競技が終わった9月3日時点で、トップは優勝候補との呼び声が高いアメリカのBenjamin Qi選手。唯一300点満点を獲得した。日本選手では北九州工業高等専門学校3年の井上選手が217点で同率11位タイと上位につけている。
(BCN・道越一郎)

練習問題を解きながら機器のチェックを行う日本選手団
練習問題を解きながら機器のチェックを行う日本選手団

2018年

8月

24日

今年は夏に本番! U-15プロコン松山大会開催

 8月11日、第3回U-15プログラミングコンテスト松山大会が愛媛県松山工業高校で開催された。一昨年、昨年と12月に行ってきた大会だが、今年は心機一転、夏に本番を迎えた。

参加者と松山工業高校メカトロ部の皆さん、実行委員会の面々
参加者と松山工業高校メカトロ部の皆さん、実行委員会の面々

予選1位の中学校3年生、二宮翔さんが優勝

 3回目を迎えたU-15プロコン松山大会。今年は中国・四国地方を襲った7月豪雨の影響で、コンテストの事前講習会として位置づけられるポリテクセンター愛媛「親子ものづくり体験教室」が中止になり、8月4・5日の2日間にわたって松山工業高校で開いた事前講習会に参加した小・中学生13人が本大会に臨んだ。事前講習会でチューターとして参加者の横について指導してきた松山工業高校メカトロ部の部員たちは、大会本番では受付や機器操作など、運営に回ってスムーズな進行をアシストした。

 開会式で、松本純一郎実行委員長は「今年は規模としてはやや小ぶりの大会になったが、これまでにないすぐれたプログラムが揃った」と、期待を口にした。続いて、中村時広愛媛県知事から大会に寄せられた挨拶を代読。中村知事は、愛媛県の子どもたちが楽しみながらプログラミングを体験し、ITに対する興味関心を高める機会を提供していることに感謝の意を表した後、参加する小・中学生たちが「新たな社会をけん引する人材として成長してくれることを期待している」と結んだ。

 今年から大会を支援しているソリューション・パッケージ開発のアイサイトの仙波克彦社長は、スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツ、マーク・ザッカーバーグ、ラリー・ペイジの名を挙げ、「彼らは皆、アイデアをかたちにしている。皆さんもプログラミングを学ぶことでイメージをかたちにする力をつけてほしい」とエールを送った。これに呼応するように、会場を提供した松山工業高校の内藤善文校長は、知的財産教育への取り組みを紹介したうえで、「プログラミングによって、アイデアを現実のものにできる。がんばってほしい」と参加者を激励した。

競技の実況と解説は電子機械科の山岸貴弘教諭が担当した
競技の実況と解説は電子機械科の山岸貴弘教諭が担当した

 対戦型のゲーミングプラットフォーム「CHaser」で行われる競技は、まず予選で各選手がボットと対決。得点順に上から8人が決勝トーナメントに出場して、先攻・後攻を入れ替えた2試合を戦って優勝を目指した。松本実行委員長の言葉通り、参加者の書いたプログラムはキャラクタをスムーズに動かし、壁に突っ込んで自爆してしまったり、自分の周囲に壁を置いて動けなくなったりする場面は非常に少なかった。

 決勝トーナメントの結果、優勝したのは予選を1位で勝ち上がった松山市立北条南中学校3年生の二宮翔さん。オーソドックスでミスの少ない動きで、決勝戦の相手、小学校6年生の池田龍馬さんを下した。二宮さんは、来年1月18日に開催されるBCN AWARD 2019/BCN ITジュニア賞2019表彰式に招待され、BCN ITジュニア U-16賞を授与される。

(文・写真:ITジュニア育成交流協会 市川正夫)

2018年

8月

24日

第13回若年者ものづくり、電子回路組立ては松山工業の石田さんが金賞

 8月1・2日、石川県金沢市などで、厚生労働省と中央職業能力開発協会が主催する若年者ものづくり競技大会が開催された。BCN ITジュニア賞の対象コンテストの一つ、電子回路組立て職種は、愛媛県立松山工業高校の石田有希人さんが金賞/厚生労働大臣賞に輝いた。

会場の金沢市の石川県産業展示館。さまざまな職種が同じ会場で技能を競う
会場の金沢市の石川県産業展示館。さまざまな職種が同じ会場で技能を競う

昨年の雪辱を果たした石田さん、反省しながら前を向く

 若年者ものづくり競技大会は、メカトロニクス、 機械製図(CAD)、旋盤、フライス盤、電子回路組立て、電気工事、木材加工、建築大工、自動車整備、ITネットワークシステム管理、ウェブデザイン、業務用ITソフトウェア・ソリューションズ、グラフィックデザイン、ロボットソフト組込み、造園という15の職種で、職業能力開発施設や工業高校などで技能を習得中の企業などに就業していない20歳以下の若年者が技能を競う大会だ。

 15職種のうち電子回路組立てはBCN ITジュニア賞の対象コンテストの一つで、毎年、金賞/厚生労働大臣賞受賞者を1月の表彰式に招待している。今年は
各地の職業能力大学校・短期大学の学生と、全国各ブロックを勝ち抜いた高校生、計29人が出場した、競技では、各選手が4時間の競技時間内に仕様書にもとづいて組立て基板を製作し、これを制御するプログラムを書いて組込み技術を競う。組立て基板の製作では部品の取りつけ方やハンダの盛り方、制御プログラムの制作では仕様書通りに動作するかをみて、さらに服装や作業態度も審査して順位がつけられる。午後早い時間に競技は終了するが、厳正な審査を行うために順位の発表は翌日の昼過ぎになるというのが通例だ。

 今年の電子回路組立ては、高校2年生だった昨年の大会で惜しくも銀賞だった松山工業高校の石田有希人さんが雪辱を果たして金賞/厚生労働大臣賞を受賞。銀賞は該当者がなく、愛知県立愛知総合工科高校専攻科の安江柾寛さん、北海道旭川工業高校の鎌田聖士さん、近畿職業能力開発大学校の松下拓磨さんの3人が銅賞に輝いた。

金賞/厚生労働大臣賞に輝いた愛媛県立松山工業高校の石田有希人さん
金賞/厚生労働大臣賞に輝いた愛媛県立松山工業高校の石田有希人さん

 金賞/厚生労働大臣賞の石田さんは、序盤の組立て基板の製作でややつまずいたものの、後半得意のプログラミングで挽回し、競技時間40分ほどを残して作業を終了。確認作業を行って作品を提出した。つまずきを反省して、コメントは「ミスがあって、実力の100%を出すことができたとはいえない。次の高校生ものづくりコンテスト全国大会では、この経験を生かして頑張りたい」。自己採点はやや辛めだった。石田さんが挙げた高校生ものづくり全国大会の電子回路組立も、BCN ITジュニア賞対象コンテストの一つ。昨年は石田さんが制し、BCN ITジュニア賞2018を受賞している。

(文・写真:ITジュニア育成交流協会 市川正夫)

2018年

8月

22日

和歌山にU-16プロコン、田辺工業高校で事前講習会を開催

 7月24・25日の2日間にわたって、和歌山県田辺市の県立田辺工業高校で、第1回U-16プログラミングコンテスト和歌山大会事前講習会が田辺工業高校の地域連携講座として開催された。本大会は11月23日、田辺工業高校で開催される。

「ふだんコンピュータに触ってはいるが、プログラミングは初めて」という中学生が多かった
「ふだんコンピュータに触ってはいるが、プログラミングは初めて」という中学生が多かった

「ぼくたちもおちおちしていられない」と指導する高校生

 田辺市でのU-16プログラミングコンテスト開催は、かつて田辺工業高校の校長だった平松芳民さんがU-16プロコンの存在を知り、「子どもたちの未来をつくる」という趣旨に賛同して現在の教諭陣に働きかけて実現。5月に三角雅彦校長が開催へのゴーサインを出すと、現場では機械科の阪本貴弘教諭、情報システム科の尾花敦科長、電気電子科の竹居栄治教諭が準備を整え、開催に向けて歩み出した。U-16プロコン旭川大会実行委員会からゲーミングプラットフォーム「CHaser旭川版」のプログラムや指導資料の提供を受けながら、地元の中学校を訪問して参加者を募った。

 7月24・25日の事前講習会に参加したのは、市内3中学の1~3年生、男子10人、女子10人の計20人。講師は電気電子科の竹居栄治教諭が務め、プログラミングを学ぶコンピュータ応用部の生徒4人と開催を知って自ら手を挙げた1人の計5人がチューターとなって指導した。参加者は、1日目はプログラミングの基礎と「CHaser」のキャラクタの動かし方を学び、2日目は自分の書いたプログラムをブラッシュアップするかたちで大会への道程をスタートした。なお、11月23日の大会には、事前講習会に参加しなかった子どもでも出場できる。

田辺工業高校の生徒5人が中学生たちの間を回って指導
田辺工業高校の生徒5人が中学生たちの間を回って指導
左から機械科の阪本貴弘教諭、三角雅彦校長、電気電子科の竹居栄治教諭、情報システム科の尾花敦科長
左から機械科の阪本貴弘教諭、三角雅彦校長、電気電子科の竹居栄治教諭、情報システム科の尾花敦科長

 平松さんのほか、参加する中学校の先生や父兄、ITジュニア育成交流協会の協賛企業で白浜町に本社を置くクオリティソフトからも2人が駆けつけ、中学生の学ぶ姿を見守った。指導した高校生の一人からは、「吸収力もすごいけれど、そもそも中学生でプログラミングを勉強しようとする姿勢に驚いた。ぼくたちもおちおちしていられない」という声が上がり、指導する側にも触発されるものがあったようだ。

U-16プロコンは指導される側と指導する側がともに成長する
U-16プロコンは指導される側と指導する側がともに成長する

 開催に向けて尽力した阪本教諭は、「事前講習会に参加した子どもたちのプログラミング学習を大会までどのようにフォローしていくか、また実際に大会運営をどのように行っていくのか、考えなければ行けないことは多いが、この子どもたちが参加してくるのだと思うと身が引き締まる」と、手応えを話してくれた。第1回U-16プログラミングコンテスト和歌山大会は、11月23日、田辺工業高校で開催される。

(文・写真:ITジュニア育成交流協会 市川正夫)

2018年

8月

21日

【寄稿】U-16釧路大会で新たな試み、説明会&体験会を開催!

釧路工業高等専門学校 電子情報システム工学専攻1年(プログラミング研究会所属)
寺地 海渡

 

 U-16プログラミングコンテスト(U-16プロコン)釧路大会実行委員会は、7月7・8日の2日間、北海道釧路市の釧路工業高等専門学校(釧路高専)で、10月14日の本大会に向けた説明会&体験会を開いた。これまでも事前講習会は開催してきたが、それに先立つかたちで、まずは子どもたちコンピュータに触れてもらおう、プログラミングに親しんでもらおうという新たな試みだ。

チューターだけでなく講師もプロ研の学生が担当
チューターだけでなく講師もプロ研の学生が担当

シンプルだが奥が深いプログラム

 釧路大会は、ゲーミングプラットフォーム「CHaser旭川版」で、自分のキャラクタの動きを制御する自律型プログラムを参加者が事前に作成し、それを持ち寄って行う。ゲームは、法則性のあるフィールド上を定められた手数内に「縦横に移動する」「周囲を探索する」命令を交互に発行してキャラクタを動かして進行する。勝負は、「相手キャラクタより多くのアイテムを収集して高得点を獲得する」「隣接する相手キャラクタの上にブロックを置く」「相手キャラクタの四方がふさがって移動できなくなる」「相手キャラクタがブロックに突っ込む」ことで勝つことができる。

 プログラミングで発行できる命令は4種類だけで、それを上下左右4方向のどれに向かって実行するか、4×4のわずか16通りの動作しかない。これだけシンプルでも、プログラム中で自分のキャラクタの行動を決定するのは難しく、奥が深い。高度な自律プログラムをつくろうと思うと、大人でも知恵を絞り出さなければならない。大会で試合が始まってしまえば、参加者は自分のつくったプログラムが動作するさまを見守るほかなく、プログラミングした本人も勝負の行方に手に汗を握ることになる。

 釧路大会では、以前から参加者のバックアップを釧路高専のプログラミング研究会(プロ研)と釧路OSSコミュニティが協力して、参加者向けの事前講習会を開いてきた。今年はさらに説明会&体験会として、参加機会を増やし、門戸を広げるチャレンジに取り組んだ。

 昨年の北海道大会(旭川市)の直後、第6回釧路大会に向けて、プロ研内部で反省会を行った。全道大会ではわれわれのサポートが及ばず、釧路から出場した選手たちは満足行く結果を残せなかった。全道大会参加者からは、「次は勝ちたい」という言葉をもらい、プロ研では次回大会の準備に取り組んだ。昨年の大会では、参加者のプログラムの読解と修正などに盛大に時間を溶かした経験がある。指導する人によってプログラムの構成が異なり、そこに参加者の自主性が加わった結果、参加者の意図をプログラムから読み取ることは困難を極めた。事実、リファクタリングとバグ修正のために参加者から預かったプログラムを持ち帰って、徹夜でなんとか修正した。

指導はほぼマンツーマンの体制
指導はほぼマンツーマンの体制

 同じ轍は踏まない。今年は参加者をどのように指導するか、あらかじめ細部にわたって決定し、全員が共通の指導方法でプログラミングを教えるようにして、指導要綱と指導指南書を作成した。これによって指導者同士の意思疎通が図りやすくなり、誰が指導しても同じ品質のプログラムができて、参加者のプログラムのリファクタリングが容易になった。説明会&体験会の参加者は、2日間合わせて12人。予定していた指導方針が功を奏し、さらには指導の到達目標となるサンプルプログラムも作成してあったので、昨年以上の指導効果が現れたと自負している。それでも、参加者の理解を深めながら、時間内に目標に到達することの難しさに、個人的には教育者の苦労を多分に味わっているつもりでいる。ちょっと大げさかもしれないが、義務教育課程にこのまま情報教育を導入したときに現れる問題と同質のことなのではないだろうか。参加者からは、「難しい」「複雑」「頭痛い」「ものたりない」と大変好評(?)だった。一度で覚えられるとは思ってないので、これからも「かかってこいや」という気概をもって、次の講習に向けて振り返りと準備に取り組んでいる。

「プログラミングが強い釧路勢とプロ研」になる

 プロ研が指導する際に強みになっているのは、指導側に過去大会の参加者がいることだ。私のようなただ指導するだけの人間と大会参加経験がある指導者の最大の差は、参加者である小・中学生が実際にプログラミングをするときにどこでつまずき、どこで理解が進まなくなるのか、実体験を伴って把握できる点にある。過去大会に参加したプロ研会長の篠田裕人君や副会長の加藤楓志君は、この講習会で得られたデータをもとに講習会の進行マニュアルやリファレンスを作成し、次回以降の講習会をさらに円滑に進める準備を進めている。また、今大会にはプロ研会員の1年生を参加させている。これは、次回大会以降、指導者になるための準備をしてもらうことと、指導者が指導法を研究する際の被験者などになってもらい、「プログラミングが強い釧路勢とプロ研」になるためだ。

 説明会&体験会や事前講習会に参加する小・中学生は、今大会で初めてプログラミングに触れる子どもが少なくない。そんな子どもが「CHaser」の競技性、つまり言語的制約以外のルールに則った自律プログラムをつくらねばならないのは、ある種、高い壁だといえる。しかし、いきなりプログラミングの本質を捉えようとしていることは、難しさもあるが間違いなく貴重な経験として子どもたちの挑戦を促すだろう。一方で、教えているわれわれの技量が問われ、指導者も成長する貴重な機会でもある。釧路大会を動かしているわれわれとしては、高校1年生までの参加者がもっと増えてもらいたいと思っている。またO-16(16歳超)の方々には、釧路大会に限らず、これからも子どもたちがプログラミングを楽しむ機会づくりにぜひともご協力いただきたい。子どもたちには、「CHaser」を通じてプログラミングの本質とものづくりの楽しさをぜひ堪能してもらいたい。

 釧路大会まで残り3か月。我々はどこまで導くことができるか。参加者はどこまで成長できるか。波乱万丈のステージの幕開けである。

(写真:斉藤 和芳/構成:ITジュニア育成交流協会)

2018年

7月

26日

長野市でU-15プロコン開催へ、事前講習会に33人が参加

 長野市は、ITジュニア育成施策の一環として、市内の小・中学生を対象にした第1回U-15長野プログラミングコンテスト(U-15長野プロコン)を10月27日に開催する。これに向けて、7月21・22日にはプログラミングの基礎を学ぶ事前講習会を長野商工会議所で実施。定員の30人をはるかに超える90以上の問い合わせがあり、申し込みは60人を超えたが、今回は先着順で小学校4年生から中学校3年生の33人が参加した。この講習を踏まえて、8月5日には参加者の質問や疑問に答えるための事前講習会を実施する。

いまの長野市をつくる大人たちと未来の長野市をつくる子どもたち。プレートを持つのは、左から大会実行委員長を務める堀内征治高専プロコン交流育成協会理事長、マウスコンピューターの小松永門社長、加藤久雄長野市長、大会長の北村正博長野商工会議所会頭
いまの長野市をつくる大人たちと未来の長野市をつくる子どもたち。プレートを持つのは、左から大会実行委員長を務める堀内征治高専プロコン交流育成協会理事長、マウスコンピューターの小松永門社長、加藤久雄長野市長、大会長の北村正博長野商工会議所会頭

U-16プロコン旭川大会の視察で開催の決意を固める

 U-15長野プロコン開催のきっかけは、長野商工会議所の北村正博会頭が、昨年11月、北海道旭川市のU-16プロコン旭川大会を視察し、感銘を受けたことだった。自分でつくったプログラム同士が対戦型ゲームで競い合い、子どもたちが大いに盛り上がっていたことや、地元の旭川工業高等専門学校・旭川工業高校の学生・生徒たちが先生役になって、夏休みから秋まで、小・中学生にプログラムを教えていたこと、さらにこれを支える大人たちが一体となってITジュニア育成を目指す取り組みを肌で実感した。長野市の子どもたちも、将来、地元の産業で活躍してもらいたい――そんな願いを長野に持ち帰り、大会開催に向けて奔走した。

 その甲斐あって、4月に結成したU-15長野プログラミングコンテスト実行委員会には、趣旨に賛同した長野市教育委員会、長野市ICT産業協議会、長野市商工観光部のほか、信州大学、長野工業高等専門学校、長野工業高校が集った。この産官学が一体となった強力な布陣で準備がスタートし、7月の事前講習会開催にこぎ着けた。

33人の小・中学生が参加。親子連れが目立った
33人の小・中学生が参加。親子連れが目立った

 事前講習会の開講式の冒頭、大会長を務める北村会頭は、「少子化によってどの企業でも人手不足が続き、その解消のためにIT化を図っている。ITの力はすごい。子どもたちには、今回のプログラミング学習を通じて、論理的思考力や創造力を伸ばしてほしい」と挨拶した。

 事前講習会の準備で一番苦労したのが、参加する子どもたちが使う30台のパソコンの準備だった。「参加者の持ち込みや、中古パソコンの調達、レンタルなどを考えたが、縁があってマウスコンピューターの小松永門社長にお願いすることができた」と北村会頭。

 マウスコンピューターは、長野県にパソコンの生産拠点を置く地元ゆかりの企業だ。開講式では、そのマウスコンピューターから長野市に Windows10を搭載した14型ノートパソコン31台を寄贈する贈呈式が行われ、加藤久雄長野市長からマウスコンピューターの小松社長に感謝状が手渡された。

 加藤市長は、「長野市のITジュニア育成をご支援いただき感謝する。ICT人材の教育は非常に重要であり、産官学を挙げて取り組んで行く。子どもたちには10月の大会で大いに活躍してほしい」と述べ、小松社長は「マウスコンピューターは飯山市と長野市でパソコンを製造している。皆さんに今回使ってもらうパソコンはMade In 長野市だ。今日の講習を通じてパソコンを好きになって、学校でもITの先駆者として活躍してほしい」と、子どもたちに応援のメッセージを送った。

講師は地元IT企業の若手、15人の学生・生徒がチューターに

 事前講習会の講師は、地元のIT企業に勤める大森渉さんと小林裕さん。プログラミングのイロハから始めて、実際にパソコンを操作して演習問題に取り組むときには、信州大学と長野高専、長野工業高校の学生・生徒、計15人がチューターとして参加者の横について指導する「子どもが子どもに教える」という旭川モデルを踏襲した。

4時間にわたる講義でも子どもたちは高い集中力を発揮
4時間にわたる講義でも子どもたちは高い集中力を発揮

 休憩をはさみながらの4時間、子どもたちは高い集中力で講義を聞き、テキストを見ながらパソコン操作を繰り返す。教わる子どもが成長すると同時に、質問攻めにあうチューター――学生・生徒も成長する。いっしょに画面を見ながらプログラミングを進める子どもたちとチューターたちを見ていると、10月の大会がさらに楽しみになってくる。

学ぶ側と教える側がともに成長する
学ぶ側と教える側がともに成長する

 第1回U-15長野プログラミングコンテストは、10月27日、長野市ビッグハットで開かれる地域最大級の多業種総合展示会「産業フェアin信州 2018」のメイン会場で開催する。1998年、長野オリンピックのアイスホッケー会場だったこの場所で、この秋には子どもたちがプログラミングで熱戦を繰り広げる。

(文:ITジュニア育成交流協会 江守譲/写真:ITジュニア育成交流協会 市川正夫)

2018年

7月

13日

U-16プロコン札幌大会、OSC 2018北海道でお披露目

 7月6・7日の2日間、北海道札幌市の札幌コンベンションセンターで、オープンソースカンファレンス 2018 北海道(主催:オープンソースカンファレンス実行委員会)が開催された。北海道のU-16プログラミングコンテスト実行委員会は、昨年に続いてセミナーと展示で同志を募った。

コミュニティが支える北海道のU-16プロコン

 毎年、全国各地で開催されているオープンソースカンファレンス(OSC)のなかでも、北海道のOSCは東京に次ぐ規模を誇るオープンソースのお祭りだ。今年は66のコミュニティが参加し、70を超える展示ブースと50本のセミナーで来場者に「オープンソースのいま」を伝えた。

 北海道のU-16プログラミングコンテスト実行委員会は、現在、道内で大会を開催している旭川、釧路、帯広の有志のほか、道内各地域の技術系コミュニティ活動を支援する一般社団法人LOCALのメンバー有志で組織される。実行委員会やコミュニティのメンバーは重複参加者がほとんどで、連携の強さを感じさせる。昨年のOSC2017北海道で初めて「U-16プログラミングコンテスト(U-16プロコン)」をテーマに行ったセミナーは、今年は10月28日に第1回を開催する札幌大会を前面に押し出しながら、大会の意義や競技部門で使用するゲーミングプラットフォーム「CHaser」の解説、デモンストレーションなどを行った。

U-16プロコン札幌大会実行委員長の八巻正行さん
U-16プロコン札幌大会実行委員長の八巻正行さん

 講師は、U-16プロコン札幌大会実行委員長を務める八巻正行さん。30人を超えるセミナー参加者を前に、旭川市で8年前に始まったU-16プロコンの歩みを簡単に紹介した後、開催の意義の一つとして、「PCが好きな子どもたちに、夢や目標となる場所を提供する。好きだけれど、何をやればいいかわからない子どもの目標になればいい。そんな子どもを『PCが好きな消費者』で終わらせてはいけない」と、プログラミング修得の入口として、すそ野を広げていく活動であることを挙げた。

 また、プログラミングを学ぶ高校生・高等専門学校生が16歳以下の後輩たちを直接指導していくことでともに成長するだけでなく、そこから生まれる「縦のつながり」や、同世代の子どもたちが集まって学校の垣根を越えて切磋琢磨し、交流することで生まれる「横のつながり」を強調。なかでも、「子どもがプログラミングをやることがえらい、のではない。大人と同じ道具・手法でプログラミングを実践する子どもたちをわれわれが一人のプログラマとして認め、向き合うことで、さらなる自信と向上心をもってもらいたい。それが、情報技術を通じての子どもたちの健全育成や将来のITエンジニア育成につながる」という言葉が印象に残った。

10月28日、札幌コンベンションセンターで開催

 大会の説明と「CHaser」の解説の後は、競技部門のデモンストレーションとして、2016年の旭川・北海道大会で優勝した中学3年生による「歴代最強プログラム」と、3人の大人たちがそれぞれつくったプログラムがトーナメント形式で対戦した。決勝戦は、U-16プロコンの生みの親の一人による高度なロジックを駆使したプログラムに対して、オーソドックスな手法を積み重ねて綿密に組み立てた「歴代最強プログラム」が勝利した。対戦中は会場から声が上がるなど、セミナー参加者の反応は上々。北海道情報専門学校の学生がイラストを描いた札幌大会のチラシを手に、八卷実行委員長はPRに余念がなかった。今後、コンテストに参加する中学生を集めた事前講習会の準備に取りかかる。

大人大会は中学生の「歴代最強プログラム」が勝利
大人大会は中学生の「歴代最強プログラム」が勝利
北海道情報専門学校の学生がイラストを担当
北海道情報専門学校の学生がイラストを担当

 第1回U-16プログラミングコンテスト札幌大会は、札幌の街を挙げてのIT・カルチャーイベントである「No Maps」のイベントの一つとして子どもたちにさまざまなプログラミング体験を提供する「ジュニア・プログラミング・ワールド2018 with TEPIA」と同時に開催する。10月28日午前10時、札幌コンベンションセンターに集まる子どもたちの目の輝きが楽しみだ。

(文・写真:ITジュニア育成交流協会 市川 正夫)

2018年

7月

06日

中国プログラミング教育最前線(7)山東商業職業技術学院

 山東商業職業技術学院は、山東大学のような「本科」に次ぐ位置づけの大学専科高等教育機関だ。学術研究などを幅広く行う本科に対し、専科はより実践的な教育を通じて即戦力を養成する機能をもつ。ここでコンピュータ教育を行っている情報・芸術学院の朱旭剛 副院長に、コンピュータ教育の現状を聞いた。

本科に負けない実践力を養成する情報・芸術学院

 山東商業職業技術学院は、およそ1万5000人の学生を擁し、山東省の専科大学のなかではナンバーワンの実績を誇る。中国政府が定めるモデル校100校のうちの一つで、他の大学に先だってさまざまな実験的な教育などを行っている。また、山東省で16件が認定されている中国優秀校のうちの一つでもある。

済南市中心部からやや東の旅遊路にある山東商業職業技術学院
済南市中心部からやや東の旅遊路にある山東商業職業技術学院

 会計・金融や商業関連の学院に所属する学生が最も多い。そのなかで情報系の教育を担うのが、情報・芸術学院だ。学生は約2500人で、教員は約80人。山東省にある情報系の専科大学ではトップクラスに位置づけられる。昨年開かれた中国職業技能大会では、電子情報関連の情報セキュリティ、モバイルソフト開発、ソフトウェア試験の4部門で金メダルを獲得し、一昨年の2個から倍増となった。山谷はあるものの、学生の質は年々向上している。

IoTなどのハードが絡む学院とソフトと芸術系の学院に分割

 以前は電子情報学院としてハードウェア、ソフトウェアの両方を教えていたが、昨年末に情報系の学院を再編成。情報・芸術学院がソフトウェア系として再出発した。応用電子やIoTといったハードウェアに絡む部分は、スマート製造・サービス学院が担当することになった。ソフトウェア系の情報・芸術学院には、ソフトウエアテクノロジ、クラウドコンピューティング、ビッグデータ応用技術、ネットワーク技術、コンピュータ応用技術などのほか、芸術系のデジタルメディア関連、建築専攻がある。

山東商業職業技術学院 情報・芸術学院の朱旭剛副院長
山東商業職業技術学院 情報・芸術学院の朱旭剛副院長

 情報系にこうしたメディア関連や建築専攻が含まれることについて、朱副院長は「本科と違って技術や技能の習得に力を入れており、理論だけではなく実践に即した教育を行っている。例えば、汎用のソフトウェアに関して本科の大学と競争すると比べものにならないが、ソフトウェアと建築と結びつくような実践的な課題に関して強みが出てくる」と話す。

 現在、特に力を入れているのは、開発系ではウェブとモバイルのアプリケーション。言語ではJAVA、HTML5などだ。モバイル系OSでは、以前はiOSに力を入れていたが、今はAndroidに軸足が移ってきたという。どちらも必要だが、限られた時間で取り組むには、今後ユーザーの拡大が見込まれるAndroidを、と考えているからだ。また、クラウドコンピューティングにも力を入れている。前述のモデル校として国から5000万元、山東省から200万元と計700万元の資金を得て、全国の職業大学で活用できるように学生向けの教育用のコンテンツ制作も行っている。

 全部で3年間の課程のうち、1年生では基礎知識を学び。2年生からそれぞれの専攻に進んでいく。最終年度の3年生になると、インターンとして企業で実践的な業務を身につける。そして、多くの学生はそのままインターン先の企業に就職するという。

情報・芸術学院は情報系と芸術系の連携が強み
情報・芸術学院は情報系と芸術系の連携が強み

 ウェブアプリケーションの開発が専門の朱副院長は、実践的な技術を身につけさせる目的もあって、学生と一緒にシステム開発を行っている。最近では、ウイチャットのアプリケーションとして、大学で利用する実習管理システムを開発した。これは先生と学生のコミュニケーションを円滑にするアプリで、どんな実習をどこでやっているかをリアルタイムで把握でき、先生から学生への指示もアプリを通じて行うことができる。

先生はコーチのようなもの。実際の開発で実践力を身につける

 朱副院長は、「学生と一緒にアプリケーション開発をしながら、不具合を一つひとつ修正していく経験を通じて、企業での業務に即した力が身についていく。先生はコーチのような存在だ」と話す。卒業後の進路については、「開発だけではなく、アフターサービスやメンテナンス、販売なども含む広い意味でのソフト関連の仕事に就いている卒業生が6~7割程度」だという。なかには会社を設立して、朱副主任の開発したソフトのメンテナンスを請け負っている卒業生もいるという。

 数年前までは、NECソフトウェアの依頼を受けて、クラス全員でソフトウェア開発をしていたという。日本語の講座もあった。しかし、この2~3年は、こうした対日アウトソーシング業務を意識したカリキュラムは消えてしまった。朱副院長は「くわしい理由はよくわからないが、今後もリクエストがあれば、要望に添った人を育成する」と話した。

朱副院長(左)と筆者
朱副院長(左)と筆者

 日本で2020年に始まる小学生向けのプログラミング教育について意見を聞くと、朱副院長は「子どもたちへのプログラミング教育については、アメリカが進んでいる。MIT(マサチューセッツ工科大学)などでもさまざまな試みが行われているので、それが参考になる。やはり、眼で見て、わかりやすいことが大事だ。例えば、ロボットを使って子どもの好奇心を高めながら、自分でやりたいことを実現できる環境を用意するのがいいと思う」と話してくれた。

(BCN・道越一郎)

2018年

6月

01日

中国プログラミング教育最前線(6) 山東師範大学情報科学工程学院

 山東省済南市にある山東師範大学は、山東省でもトップレベルの総合大学だ。約3万7000人の学生と約2400人の教員を擁し、教員養成を主眼とする。元情報科学工程学院院長で現在情報技術局長を務める劉方愛先生に、プログラミング教育の現状を聞いた。

教員育成と即戦力技術者の養成を目指す

 山東師範大学は、1984年にコンピュータ系専門学科を開設。1995年には、情報センターと情報専門学科をまとめて情報科学工程学院を設置した。現在は、主にプログラミングを教えるコンピュータ・サイエンス学課、IoTなどのハードウェアを含む通信学課、そして、大学全体の学生を対象にコンピュータの基礎を教える教育学課の三つのコースに分かれている。情報科学工程学院の学生は現在1855人で、大学院生が238人。博士課程に30人が所属している。教員は全部で95人で、うち教授が16人、副教授が27人、博士が9人という陣容だ。

山東省済南市の観光名所でもある千仏山にほど近い千仏山校区にある山東師範大学の情報科学工程学院。正面に立つ大きな毛沢東像がキャンパスのシンボルだ
山東省済南市の観光名所でもある千仏山にほど近い千仏山校区にある山東師範大学の情報科学工程学院。正面に立つ大きな毛沢東像がキャンパスのシンボルだ

 情報科学工程学院のコンピュータ教育は、大きく分けて二通りの人材育成を目指している。一つは教師の育成で、これは師範大学の性格上、欠かせない要素だ。もう一つは、卒業後即戦力として働くことができる応用型人材の育成だ。教師の育成については、理論と技術基礎を重視。学卒で教師になる数は少なく、院卒から教師になる例が大半という。

 即戦力の応用型人材の育成では、ハードやソフトの技術研究を通じて得た深い理論的な知識をバックボーンに、就職時に力を発揮できる教育に力を入れている。ソフトウェア開発や、主に日本向けアウトソーシング開発の対応などのついても教育する。とくに山東省にある中国を代表するサーバーベンダー、浪潮(insper)と連携して、「2+2」のカリキュラムを組んでいる。これは、大学で2年間基礎知識を勉強した後、2年間会社でインターンとして働くことで、より実践的な人材育成を行う取り組みだ。

山東師範大学情報科学工程学院の劉方愛情報技術局長
山東師範大学情報科学工程学院の劉方愛情報技術局長

プログラミングコンテスト入賞で給料が2倍の事例も

 学生は、入学1年目は学科に分かれず、英語や哲学など教養学課とあわせて等しくコンピュータの基礎知識を学ぶ。ここでは、ソフトウェア設計や数学、データベース構造、電子工学などの基礎を身につけていく。コンピュータ言語はCとJAVAが中心だ。2年目からは、前述のコンピュータ・サイエンス、通信、教育の三つの学課に分かれて専門知識を深めていく。師範大学だけあって、最も人気があるのは教育学科。コンピュータの教師を目指す女子学生の比率が高い。各学科ともに定員が定められているので、1年次の成績によっては希望の学課に進むことができないケースがあるのは、日本の大学と同じだ。

 3年、4年と進むにつれて、それぞれの学課でより実践的な内容に深化していき、Oracle、Pythonなどが加わっていく。4年生になると、半年ほど企業のインターンや学校での教育実習を通じて実践力を高め、卒業設計などに入っていく。大学院に進むのは3割ほどで、教員志望が多い。残りの6~7割が学卒で企業に就職する。うち8~9割はIT系の企業か、一般企業のIT部門に就職できているようだ。大学で勉強したことが直接、間接に役立つ環境だ。

 情報科学工程学院の学生が参加するプログラミングなどのコンテストには、毎年11月に表彰式が行われる「山東省大学生ソフトウェア設計コンテスト」を筆頭に、「挑戦杯」や世界大会のACM-ICPCなどがある。山東師範大学は、これまでアジア大会で金メダルを獲得した実績がある。このほか、中国全土を対象とした「インターネットプラス」など、ネットワーク関連のコンテストも人気だという。コンテストを目指す学生には、実験室を開放したり、指導教員をつけたりと、サポート体制は整っている。学生が入賞すれば教師にも奨励金が入ることもあって、指導にも熱が入る。学生にとってもメリットは大きく、入賞すると、大学院の入試が免除されることがある。就職にも有利で、就職後に給料が倍になる例もあるという。人気の分野は、スマホアプリの開発やIoT、ビッグデータ分析などだ。

情報科学工程学院が入る校舎。歴史を感じさせる建物が多い
情報科学工程学院が入る校舎。歴史を感じさせる建物が多い

 2020年から日本の小学校で始まるプログラミング教育。最大の課題は指導者の養成だろう。山東師範大学で長年教鞭を執ってきた劉先生に、どうすれば教員を確保できるかについて聞いた。まず、大学の教員については「先生は基礎理論や知識を重視しなければならない。それをしっかり学生に教えることが基本になる。ただ、学校はIoTやAI、ビッグデータなどの先端技術はほとんどもっていない。もっているのは企業だ。産学連携で学校から人材を送るなど、企業と連携しながら教育していく必要がある」と話す。

 小学生などの子どもへのプログラミング教育については、「最近は、山東省内の小中学校の授業にロボットやAIなどの要素が少しずつ入るようになってきた。特にロボットのように、かたちのあるモノをうまく使って子どもたちの興味を引き、教育に結びつけていくのが効果的ではないか」と話してくれた。「もし教員が不足するなら、政策として外国からコンピュータの先生を招くことも考える必要があるのではないか」という提案もいただいた。

(ITジュニア育成交流協会・道越一郎)

2018年

5月

03日

【協賛企業通信】サンワサプライ(下) 岡山に航空宇宙産業を

 PCやタブレット周辺機器メーカーのサンワサプライの山田哲也社長は、2019年5月1日に長男で専務の山田和範氏に社長を交代する計画だ。会長に就任する山田社長は、今後の成長分野である「航空宇宙産業」に着目し、地元、岡山の新たな産業に育成しようと活動している。

岡山市にあるサンワサプライの本社
岡山市にあるサンワサプライの本社

身近になった航空宇宙産業

 実は山田社長は30年前から、航空宇宙産業を事業として立ち上げたいという思いを強くもっていた。その当時に登録した「サンワスペースインダストリー」という会社名は、今も残っている。

 かつては、大手重工メーカーや一部の国の事業団体しか手を出せなかった宇宙産業だが、ここにきてソニーが宇宙ビジネスに参入すると報じられたり、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などと一緒に参画したキヤノン電子の民生部品をつかった世界最小ロケットが打ち上げに成功したりと、民間企業に身近な存在になりつつある。関連するベンチャーも次々と生まれている。

 「通信が5Gになって低軌道の衛星が600個ぐらい上がるようになれば、よりビジネスは具体的になるだろう」と山田社長は読む。同じ文脈で、ドローン関連の商品や、ドローンの操縦訓練を行う学校、そのための運用スペースの確保など、新規のビジネスが創出されていくという。

 そんななか、山田社長は17年11月27日、サンワサプライの本社がある岡山県倉敷市で、市長や商工会議所のメンバー、有力企業を巻き込んで「MASC(岡山県倉敷市水島地域への航空宇宙産業クラスターの実現に向けた研究会)」を立ち上げ、副理事長として具体的なアクションを起こしている。

 合言葉は“SPACE is OPEN”。「今、地上にある仕事の量を考えても、宇宙はまったくの空白地帯。ビジネスチャンスは大きい。『皆さん、速く手を挙げた方がいいですよ』と声掛けしながら、MASCを立ち上げた」と研究会設立の経緯を語る山田社長。社長自身、国内外の宇宙関連の展示会に参加したり、ベンチャーを直接訪問したりしている。業績が好調な企業ほど、航空宇宙産業に寄せる期待が大きかったという。

「MASC」の合言葉は「SPACE is OPEN」
「MASC」の合言葉は「SPACE is OPEN」

航空機をつくるDNAが残っている

 MASCは昨年11月に設立総会と勉強を立ち上げ、つい先日の4月28日には岡山市立美術館の講堂で第1回「航空宇宙ビジネスフォーラム」を開催。地元企業による宇宙産業の将来性や可能性について研究した。

 MASCの活動は、山田社長が生まれ育った岡山に、将来性のある新しい産業を根付かせたいという思いもある。「岡山は繊維産業や農業などが強いが、もうひとつ将来が見込める大きな事業をつくりたい」と熱く語る。

 倉敷と宇宙は、縁遠い存在でもない。倉敷市の水島には、終戦近くの1943年に三菱重工業の水島航空機製作所が設立され、70年に今の三菱自動車工業の水島製作所になっている。「倉敷には航空機をつくるDNAが残っていて、それを引き継げたらいいと思う」と山田社長は語る。

 サンワサプライが手掛ける事業との関連性は今のところ薄いが、航空宇宙の関連機器が出てくると、通信やコンピューティングで培った知見が活かせ、ビジネスの可能性は一気に膨らむだろう。山田社長は、会長になってからも、相変わらず忙しく飛び回っていそうだ。(BCN・細田 立圭志)