高校プロコン三連覇!宮城県工業・情報研究部の強さの秘密とは  (その1) 

 2011年11月20日(日)に埼玉県桶川市のさいたま文学館にて開催された第32回全国高校生プログラミングコンテスト(高校プロコン、主催:全国情報技術教育研究会)において見事に三連覇を達成した宮城県工業高等学校。母体となったのは情報研究部内から選抜された5人で構成された高校プロコンチーム。二連覇を飾った2010年のチームでは1000試合もの模擬戦を実施し、最強プログラムの精度を高めていったが、今回はそれを上回る模擬戦を実施したという!優勝の興奮冷めやらぬ翌月、高校プロコン初となる三連覇に至る話を聞くために、今にも雪が舞いそうな杜の都・仙台に降り立った。

2011年11月20日(日)に開催された高校プロコン決勝トーナメントもいよいよ決勝戦・・・北海道の強豪、小樽工業か、宮城県工業の三連覇なるか、いよいよ決戦!
2011年11月20日(日)に開催された高校プロコン決勝トーナメントもいよいよ決勝戦・・・北海道の強豪、小樽工業か、宮城県工業の三連覇なるか、いよいよ決戦!

冷や汗が止まらなかった! 緊迫の決勝戦
高校プロコン決勝大会「CHaser2011」で勝利し、三連覇という偉業を成し遂げた宮城県工業高等学校。昨年まで無敗で勝ち上がっていた同校だが、今大会は他校のレベルが向上していることを肌で感じたという。「CHaser2011」は、3ラウンド制(2本先取)のルールとなっている。同校は今大会に入っても一度も負けることなく勝利を重ねてきたが、北海道小樽工業高等学校との決勝戦で遂に初の黒星を喫した。2ラウンド終了時点で1勝1敗となり、3ラウンド目に勝利したチームが優勝する。「1敗した時は、ドキドキして冷や汗が止まりませんでしたね。壇上にいるチーム全員で、どうしよう!と顔を見合わせてしまいました」と渕上拓也さん(情報技術科2年)は当時の心境を率直に語った。そして見事に3ラウンド目で勝利し、同校は三連覇を成し遂げた。「これまで三連覇に成功したチームがいなかったため、チームの力を合わせて、前人未到の記録を達成できたことを嬉しく思います」と浅沼謙吾さん(情報技術科3年)は感想を語った。優勝は一人だけで達成できるものではない。チーム全員の力を合わせ、これまでの努力が実を結んだ結果と言えるだろう。

写真上:渕上拓也さん 下:浅沼謙吾さん
写真上:渕上拓也さん 下:浅沼謙吾さん

2011年11月20日(日)、高校プロコン決勝トーナメント・決勝戦の様子。対戦相手は強豪、小樽工業!
2011年11月20日(日)、高校プロコン決勝トーナメント・決勝戦の様子。対戦相手は強豪、小樽工業!

決勝用プログラムはなんと一年生が作成!
三連覇の決定打となった決勝戦。ここぞいう一番で使用したプログラムは、なんと1年生の齋地崇大さん(情報技術科1年)が作成したものだった。「決勝用のプログラムでは、マップ内のアイテムを最短経路で取りに行く工夫を施しました。例えば、広いマップにアイテムが散らばっている場合、それらを効率的に取りに行くことができます」と齋地さんは説明する。しかし、このプログラムを実現するためには、相当の努力が必要だった。一年生ということもあり、何しろ「CHaser」に挑戦するのは初めて。「最初は右も左も分からない状態でした。そこでまず、全国情報技術教育研究会のホームページを見てCHaserの情報を集め、それからプログラムを書き始めました。予選大会の前の段階ではバグが多く、不安も大きかったですね」と振り返った。情報研究部の髙橋翔哉部長(情報技術科3年)は「今回のCHaserでは、1、2年生が本当に頑張ってくれました。プログラムのアルゴリズムは部全体のミーティングで決めますが、LookやSearchの頻度など、細かい微調整はメンバー各自が行います。その点では齋地くんの努力が大きかったと思います」と説明する。

写真上:齋地崇大さん 下:部長の髙橋翔哉さん
写真上:齋地崇大さん 下:部長の髙橋翔哉さん

三連覇の礎となった「ブレインマップ」
三連覇というと、他校から見ても圧倒的な強さを誇るように見えるが、実際の活動はどのようなものなのだろうか? まず最初に紹介したいのは情報研究部が採用している「ブレインマップ」だ。髙橋部長は「ブレインマップは一昨年の高校プロコンから取り入れた方法です。各部員が自分たちの手でブレインマップを作り上げ、この内容をもとに、プログラムを作成していきます」と説明した。情報研究部にとって、先に目標を明確化させ、さらに成果を引き出すのには「ブレインマップ」が大きな役割を果たしているのは明白だ。この「ブレインマップ」は情報研究部の伝統になりつつあるようだ。

目標を設定した後は、チームのメンバーたちが各自でプログラムを作成する。その後、部内では総当り戦の予選会が行われた。しかし、一番初めの予選会ではバグが頻出した状況だったという。「最初の予選会はバグがひどくて、まともに動かないプログラムがあるなど大変でした。その後、予選会を繰り返してバグを潰していくことで、全体の完成度が高まっていきました」と始めから順調ではなかった様子を浅沼さんは語ってくれた。このような取り組みが実を結び、情報研究部の高校プロコンチームが制作したプログラムは「CHaser2011」の予選大会を突破し、決勝大会進出が決定した。

2011年版のブレインマップ、中心の大目標から関連事項を部員全員で分化させていく
2011年版のブレインマップ、中心の大目標から関連事項を部員全員で分化させていく

決勝大会に向けて2500試合を目指す
予選大会後、三連覇に向けた取り組みが本格化する。まずは予選前と同様、部内で総当り戦の予選会を開始。その結果、成績上位の5人が決勝大会チームのメンバーとして選ばれた。そして11月20日の決勝大会が近づくと、最後の追い込みとして、4日間で合計2500試合を目標として、連日模擬戦を重ねていった。「模擬戦ではバグ出しチームと、そのバグを修正するプログラムミングチームに分かれて作業しました。バグ出しチームの浅沼くんが新しいバグが見つかったよ!といつも嬉しそうに報告してきて、プログラムミングチームが、またバグが出たのか・・・と落胆するというパターンが多かったですね」と髙橋部長は思い出して笑う。「バグはたくさん出ましたが、当時はやるしかない!という気持ちしかなく、夜遅くまで残って作業していました」と最終調整の様子を語った。それにしても一日当たり500試合以上の模擬戦はそう簡単ではない。その対策として今年はハードウェア班がバグ出しに参加したという。「ハードウェア班が参加してくれたことで、多くの模擬戦をこなすことができ、今まで見たことがないほどのスピードでどんどんバグが洗い出せました。それと同時に、協力してくれたハードウェア班の分まで頑張らなくてはいけない!という思いが強くなり、決勝大会に向けてさらに気合いが入りましたね」と浅沼さんは語る。三連覇は情報研究部全員の目標でもある。高校プロコンチームだけではなく、部全体の気持ちが一つになった瞬間だった。

三連覇の中心となった高校プロコンチーム。取材は終始笑顔、また、情報研究部全員は挨拶が本当に清々しい!
三連覇の中心となった高校プロコンチーム。取材は終始笑顔、また、情報研究部全員は挨拶が本当に清々しい!

顧問のサポートとは
 また、部員たちは、情報研究部の顧問である平子英樹先生、加藤健一先生(共に情報技術科教諭)への感謝の気持ちも忘れてはいない。両先生は常日頃から「三連覇」を部員に徹底してきた。「先生が三連覇を目指すといつも指導してくださったので、やるしかない!という気持ちになりました。三連覇に向けてモチベーションを維持することは大変でしたが、途中で先生たちの言葉が励みになりました。そのうち、諦めるという選択肢が自分たちの中でなくなってきました」と髙橋部長は笑顔を見せる。 時には、両先生から檄が飛ぶこともあった。「部内の予選会でバグが頻出した時は、自分で発見できるバグなのに、なぜ対戦時になって発見されるのか。やるべきことをやっていない、と指摘を受けることもありました」と時には檄を飛ばされたことを明かした。予選で一位になった時は「これに驕ることなく三連覇を目指して頑張ろう!と励まされました」と浅沼さんは語る。
 「技術的な指導もありましたが、それ以上に、気持ちの面でとても多くの励ましをいただきました。先生がいらっしゃらなかったら、三連覇は実現できなかったと思います」と髙橋部長はハッキリと言った。この言葉がすべてを物語っているだろう。

左より加藤健一先生、平子英樹先生。共に情報技術科教諭で情報研究部の顧問として部員をいつも見守っている
左より加藤健一先生、平子英樹先生。共に情報技術科教諭で情報研究部の顧問として部員をいつも見守っている

視線はすでに高校プロコン四連覇!
次なる目標はもちろん、四連覇だ。すぐれたプログラミング能力を発揮した1年生の齋地さんは「今年のプログラムは先輩方が作ってきたアルゴリズムなどを参考にしましたが、来年は自分たちの世代が考えた新しいアイデアを加えたプログラムで、さらに四連覇を目指したい」と抱負を語る。就職が決定し、今年情報研究部を引退する髙橋部長は「3年生になり、U-20プロコンや就職活動などが忙しく、今年は本格的に高校プロコンに向き合う時間がありませんでした。しかしその中で、後輩たちが健闘している姿を見て安心しましたね。これからも情報研究部の伝統を引き継いで、四連覇、五連覇と記録を伸ばしてほしいと思います」と後輩たちへエールを送った。 

決勝戦直後のカット。1勝1敗となり、3ラウンド目についに勝利を手にしたメンバーたち。この日初めて感情を表に出した一瞬。興奮冷めやらぬ表情が印象的だった
決勝戦直後のカット。1勝1敗となり、3ラウンド目についに勝利を手にしたメンバーたち。この日初めて感情を表に出した一瞬。興奮冷めやらぬ表情が印象的だった

ある部員は「情報研究部の活動は毎日楽しいんです!」と語ってくれた。この写真が全てを物語っていますね!
ある部員は「情報研究部の活動は毎日楽しいんです!」と語ってくれた。この写真が全てを物語っていますね!

 

高校プロコン三連覇!宮城県工業・情報研究部の強さの秘密とは その2へ続く

 

本文:秋葉けんた、加藤純一

構成・写真・解説:ITジュニア育成交流協会事務局