2016年

11月

18日

【協賛企業通信】冨田勲氏追悼特別公演、初音ミクがダンサーと共演

 5月5日に慢性心不全のため84歳で亡くなった世界的なシンセサイザー音楽の第一人者で作曲家の冨田勲氏の追悼特別公演が、11月11・12日の2日間、東京・渋谷のBunkamuraオーチャードホールで開かれた。公演では、亡くなる1時間前まで氏が精力的に取り組んでいたスペース・バレエ・シンフォニー『ドクター・コッペリウス』が初めて披露された。

 『ドクター・コッペリウス』は、初音ミクとオーケストラ、バレエで宇宙への旅を描く作品。指揮は渡辺一正氏、オーケストラは東京フィルハーモニー交響楽団。バレエダンサーで、コッペリウス役の風間無限氏と初音ミクのパ・ド・ドゥ(二人踊り)を披露するなど、“世界のTOMITA”が遺した音楽の集大成に会場は酔いしれた。

『ドクター・コッペリウス』で初音ミクとのパ・ド・ドゥ(二人踊り)を披露するバレエダンサーでコッペリウス役の風間無限氏 ©Crypton Future Media,INC.www.piapro.net/photo by 高田真希子
『ドクター・コッペリウス』で初音ミクとのパ・ド・ドゥ(二人踊り)を披露するバレエダンサーでコッペリウス役の風間無限氏 ©Crypton Future Media,INC.www.piapro.net/photo by 高田真希子

 冨田氏が遺したストーリー原案と音楽構想にもとづいてプロジェクトメンバーが完成させた『ドクター・コッペリウス』は、宇宙を夢見るロケット開発者のコッペリウスが初音ミクと出会い、宇宙空間に飛び出すというストーリーだ。公演には、初音ミクの生みの親、クリプトン・フューチャー・メディアの伊藤博之代表取締役が初音ミクの映像開発ゼネラルプロデューサーとして参画した。高校生の頃に冨田氏の音楽に触れ、感銘を受けたという伊藤代表取締役。ヴァーチャルシンガーとして冨田作品に初音ミクを出演させるのは、2012年初演の『イーハトーヴ交響曲』に続いて2作目となる。「初音ミクが人間のバレリーナとともに舞う。実在しない初音ミクを舞台に登場させて、他の演奏者と同じように指揮者の指揮に合わせて歌を歌うシステムは当社で開発した」と話す。

冨田作品ついて「70年代の初期の作品を聞いても古いという感じがしない。当時前例のないなかで、Moogシンセサイザーで試行錯誤してつくられたであろう音色が楽曲のなかにたっぷりと含まれていて、作品が単なる作曲にとどまらず、音響デザインになっているところがとても興味深い」と語るクリプトン・フューチャー・メディアの伊藤博之代表取締役
冨田作品ついて「70年代の初期の作品を聞いても古いという感じがしない。当時前例のないなかで、Moogシンセサイザーで試行錯誤してつくられたであろう音色が楽曲のなかにたっぷりと含まれていて、作品が単なる作曲にとどまらず、音響デザインになっているところがとても興味深い」と語るクリプトン・フューチャー・メディアの伊藤博之代表取締役

 作品は、間に合わなかった第1楽章と第2楽章を欠番にして、第3楽章から第7楽章までで構成。さらに、プロジェクトメンバーが冨田氏への想いを捧げる第0楽章を冒頭に付け加えて演奏された。随所に「TOMITAサウンド」がちりばめられ、冨田勲の遺作にふさわしい楽曲に仕上がっている。加えて初音ミクが歌い人間とともにバレエを踊るという近未来的な試みは、最後まで少年の心をもち続けた冨田氏らしさを表現していた。舞台上部、左右に配置した変幻自在に形を変えるスクリーンを使った斬新な映像演出も秀逸。舞台上で自由に動く人間のバレエダンサーに対し、スクリーンの中だけでしか踊れない初音ミク姿は、亡くなった冨田氏を表すかのようで、もの哀しくもあった。

会場では、思い出として追悼特別公演のパネルを写真に収める来場者も目立った
会場では、思い出として追悼特別公演のパネルを写真に収める来場者も目立った

 公演では、このほかオーケストラと合唱団、初音ミクを共演させ、宮沢賢治の世界を表現した『イーハドーヴ交響曲』や、冨田氏の代表作の一つ、ホルストの『惑星』のリミックス版『惑星 Planets Live Dub Mix』が披露された。もともとこの日は「冨田勲 生誕85周年記念 新作世界初演 冨田勲×初音ミク 『ドクター・コッペリウス』」が企画されていたが、冨田氏の遺志を継いで追悼特別公演というかたちで実現した。

 なお、『ドクター・コッペリウス』の再演が決定した。『冨田勲×初音ミク ドクター・コッペリウス』と題し、演奏は新日本フィルハーモニー交響楽団。東京・墨田区のすみだトリフォニーホールで2017年4月に開催する。

(文・写真:ITジュニア育成交流協会 道越一郎)