第6回U-16旭川プロコン、雪を融かした子どもたちの熱気

「例年に比べると3週間は早いですね」。タクシーの運転手さんは開口一番、天候をそんなふうに表現した。旭川は白一色。雪は降り続いていたが、しかし旭川科学館のなかは、1年前に感じた独特の興奮に包まれていた。第6回U-16旭川プログラミングコンテスト/第3回U-16プログラミングコンテスト北海道大会(主催:U-16旭川プログラミングコンテスト実行委員会/後援:旭川市教育委員会)は、そんな熱気のなかで始まった。

競技部門は過去最高の54人が参加

 大会当日の朝、30cm近くまで降り積もる雪のなか、大会に参加する子どもたちが先生に連れられて、次々に会場の旭川市科学館サイバルに入っていく。第6回U-16旭川プログラミングコンテスト/第3回U-16プログラミングコンテスト北海道大会は、11月6日午前10時、旭川高等専門学校の佐竹利文教授による開会宣言で幕を開けた。

 U-16プログラミングコンテスト(U-16プロコン)には、競技部門と作品部門がある。競技部門は対戦型ゲームプラットフォーム「CHaser旭川版」の上で参加者が作成したプログラム同士が戦って勝敗を決めていく。今年の競技部門の参加者は、昨年の倍近い54人。中学校7校、高校3校からの参加だ。昨年と同じ会場の特別展示室は、スクリーンと機材、観客席を置いたら満杯状態になっていた。

 作品部門は、CGやウェブコンテンツ、アプリ、音楽など、プログラムを用いて制作した作品であれば自由に参加できる。会場後ろのボードで展示した作品部門には、9作品が集まった。

 競技部門の旭川大会予選は、一人ひとりが実行委員会が用意したプログラムと戦って得点を競い、上位12人が決勝に進出する。決勝トーナメントは北海道大会を兼ねて、この12人に釧路大会の優勝者・準優勝者、帯広大会の優勝者・準優勝者の4人が加わり、16人が2本先取の3本勝負で優勝を争う。

 自分が書いたプログラムが観客の前で戦うのは、期待と不安、そして何となく感じる恥ずかしさが三分の一ずつ、といったところだろうか。分身同士の戦いでは、自分のプログラムだけでなく、仲間が書いたプログラムであっても応援には力がこもる。とくに過去最高の参加者を記録した今年は、歓声と笑いが絶えない楽しい大会となった。

 予選では、残念ながらプログラムが立ち上がらなかったり、すぐに止まってしまったり、あるいは自ら壁に突っ込んでしまう、同じところをぐるぐる回ってしまうシーンも見られたが、そこは初めてプログラミングに取り組んだ子どもが誰でも通る道。勝っても負けても失敗しても、歓声が会場を包んでいた。

会場は常に歓声と笑いに包まれていた
会場は常に歓声と笑いに包まれていた

決勝は女子生徒の戦いに

 旭川大会予選を勝ち抜いた12人の内訳は、今年初めて挑戦した中学1年生が5人、2年生が1人、3年生が5人、高校・高専1年生が1人。昨年、旭川大会を制して北海道大会に進み、決勝で涙をのんだ下村恵子さん(旭川教育大付属中3年)や、富良野から参加した中村拓夢さん(富良野緑峰高1年)など、多彩な顔ぶれだ。

 決勝トーナメントからの北海道大会に参加するのは4人。釧路大会では、昨年、一昨年の北海道大会の覇者の二人が敗退するという“波乱”があり、それだけに今年優勝した畑井有人さん(釧路高専1年)、準優勝の岸凪沙さん(阿寒中1年)に期待が集まった。つい3日前に初めて開催した帯広大会からの代表は、優勝した松尾真冬さん(帯広工業高1年)と準優勝の伊藤航さん(帯広工業高1年)だ。

 2本先取の決勝トーナメントはさすがにレベルの高い戦いになった。戦いの場である「CHaser」のマップパターンが変わったことや、相手のプログラムとの相性という運の要素もあって、旭川大会の予選上位者や釧路・帯広の代表はなかなか勝つことができない。ベスト4に残ったのは、岩上舞依さん(中央中1年)、鬼塚佳任さん(神居中2年)、後藤耀一さん(神居中3年)、それに予選1位通過の下村さんという“旭川組”で、決勝は岩上さんと下村さんという女子生徒の戦いになった。

決勝に進出した岩上舞依さん(左)と下村恵子さん
決勝に進出した岩上舞依さん(左)と下村恵子さん

 決勝はお互いのキャラクターがにらみ合う場面もある見応えのある戦いで、1本ずつ取り合った後、下村さんが最後のゲームで岩上さんを制した。下村さんのプログラムは、傍から見ていても他の参加者のそれとは動きが異なるプログラム。スタートから周囲を見渡し、自分のキャラクターがマップ上のどこにいるかを確認してから動き出す。自信もあっただろうが、しかし3本勝負で1本取られたとき、下村さんの顔には不安と緊張の表情が貼りついていた。最後の1本で勝負が決まったとき、両手を挙げて飛び上がって喜んだのが印象的だった。終わってみれば、昨年の悔しさを見事に晴らした下村さんの順当勝ちだったが、やはりU-16プロコンにはドラマがある。

下村さんは全身で優勝の喜びを表現
下村さんは全身で優勝の喜びを表現

 今年の大会は、ITジュニア育成交流協会の協賛企業であるさくらインターネットの協力で、大会の模様をYouTubeのライブストリームで配信。大会の司会をITイベンターとしてつとに知られたさくらインターネットの法林浩之さんが務めたことで、例年にも増して盛り上がった大会になった。さらに、同じく協会協賛企業であるクリプトン・フューチャー・メディアやアイ・オー・データ機器、バッファローが副賞を提供している。

司会・実況で会場を盛り上げた法林浩之さん
司会・実況で会場を盛り上げた法林浩之さん

 地域の大人たちの志によって支えられた高校・高専の先輩たちが、子どもたちを大会まで導いていく――そんな理想的な仕組みをもった大会が成長を重ね、「プログラミングの世界に子どもたちの未来をつくる」イベントとして全国に発信できるレベルに成長しつつある。そんな印象を抱かせる今年のU-16プロコンだった。

決勝トーナメント出場者たちでパチリ
決勝トーナメント出場者たちでパチリ

(文:ITジュニア育成交流協会 市川正夫)
(写真:道越一郎・市川正夫)