夏から始まるU-16プロコン、事前講習会で中学生がプログラミングを学ぶ

 ゼロからプログラミングを学ぶ子どもたちを、いまプログラミングを学んでいる先輩たちが導く――そんなすばらしい仕組みをもっているのが、U-16プログラミングコンテストだ。この夏、北海道旭川市と愛媛県松山市で、秋・冬の大会を見据えたプログラミング教室(事前講習会)が開催された。

U-16プログラミングコンテスト旭川事前講習会会場の旭川市科学館
U-16プログラミングコンテスト旭川事前講習会会場の旭川市科学館

 2011年に始まったU-16プログラミングコンテスト旭川大会は、旭川市や近郊の中学校・高等学校に在籍する16歳以下(高校1年生以下)の子どもたちを対象にしたプログラミングコンテストで、毎年参加者を増やしながら今年で7回目を迎える。競技部門と作品部門があり、競技部門は対戦型ゲームプラットフォーム「CHaser旭川版」の上で参加者が作成したプログラム同士が戦って勝敗を決める。観客の目の前で自分の書いたプログラムが戦うという、まさにスポーツの試合のような興奮を伴う部門だ。作品部門は、CGやウェブコンテンツ、アプリ、音楽など、プログラムを用いて制作した作品であれば自由に参加できる。

 11月5日の大会に向けて、実行委員会は7月28日と31日の両日、旭川市科学館で競技部門の参加者を対象に事前講習会を開催した。参加したのは28人の中学生で、愛別や中富良野といった旭川市外からの参加者もみられた。実行委員会の北海道旭川工業高校・下村幸広教諭によれば、毎年まとまった人数が参加する市内の中学校は、独自に講習を行っているという。

テキストやスライドは高専生・高校生の合作だ
テキストやスライドは高専生・高校生の合作だ

 講習会の講師を務めたのは、旭川工業高等専門学校と旭川工業高校でプログラミングを学ぶ生徒・学生たち9人。合同チームをつくってテキストを作成し、プログラミングの基本と競技部門で使用する「CHaser旭川版」のプログラミングを教えた。実行委員会の大人たちが登場するのは開会と閉会の挨拶だけで、講習中は口は出さない。高専生・高校生を信頼し、すべてを任せて温かく見守っている。彼らは「教えることの難しさ」を体感しながら、それを乗り越えて自らも学び、成長していくのだ。

教える側と学ぶ側の年齢が近iいのでコミュニケーションはスムーズ
教える側と学ぶ側の年齢が近iいのでコミュニケーションはスムーズ

 講習会は用語の解説から始まり、競技の仕組みとコマの動きを制御するプログラミングの説明に入っていく。中学生たちはほとんどがプログラミングの経験がなく、「ちょっと興味がある」「人にすすめられた」というのが参加理由。ゲームへの興味も大きな動機になっているようだ。

 講習会終了後、子どもたちは中学校のクラブ活動などで自分のプログラムを磨いていくのだが、わからないことが出てきたり、行き詰まってしまったりしたときは、実行委員会に連絡すると、高専生・高校生たちが中学校に来て教えてくれる。そんな大会参加に向けたフォローが、U-16プロコンが地域に根づいてきた大きな要因の一つだろう。

夏休み親子ものづくり体験教室の会場、松山市のポリテクセンター愛媛
夏休み親子ものづくり体験教室の会場、松山市のポリテクセンター愛媛

 一方、昨年12月に第1回U-16プログラミングコンテストを開催した愛媛県松山市でも、ポリテクセンター愛媛で開催される人気のイベント、夏休み親子ものづくり体験教室のなかで、昨年に続いて「プログラミング体験教室」が開催された。ポリテクセンター愛媛と、教室開催の中心である愛媛県立松山工業高校の山岸貴弘教諭が検討を重ね、昨年の経験を踏まえて募集を中学生に絞り、講習時間は4時間を確保し、申込みも事前登録制にした。もちろん、12月に松山工業高校で開催する第2回U-16プログラミングコンテスト松山大会の参加者を募る「事前講習会」の意味合いももっている。ちなみに、昨年の大会開催実績もあって、キャンセル待ちが参加者と同じ人数になるくらいの人気プログラムだったという。
 参加したのは中学生16人。いずれもプログラミングの経験はなく、キーボードの扱いに慣れている子どもは2~3人だった。講師は松山市内でシステム開発会社を経営する松本純一郎氏がプログラミングの基礎を担当し、松山工業高校メカトロ部プログラミングコンテストチームの8人がチューターになって直接中学生たちを教えていく。松山工業高校メカトロ部は、高校生プログラミングコンテスト(高校プロコン)で使われる対戦型ゲーム「CHaser」についての技術とノウハウにかけては超一流。昨年は、高校プロコンで日本一に輝いており、チューターにはそのメンバーも残っている。いわば日本一の先生たちだ。

2人の中学生を1人の高校生が指導する
2人の中学生を1人の高校生が指導する

 2人の参加者に1人のチューターがつき、プログラミングの基礎と「CHaser」のコマの制御を教えていき、意図した通りにプログラムが実行されると、参加者から声が上がる。行き詰まるとチューターもいっしょになって考え、バグをつぶしていく。ディスプレイを見つめる子どもたちの目は、真剣そのもの。体験教室の最後、参加者のプログラム同士で対戦が行われると、全体から歓声が上がった。12月17日の松山大会に向けて、学ぶ側も教える側も、大きな手応えを得た瞬間だった。

テキストとディスプレイに注がれる真剣なまなざし
テキストとディスプレイに注がれる真剣なまなざし

 旭川と松山、二つの講習会で最も印象に残ったのは、参加した中学生たちの集中力・理解力の高さと、教える高校生・高専生の真剣な表情だった。友人と連れ立って参加した中学生でも無駄口はほとんどなく、テキストとディスプレイを交互に見つめ、ぎこちないしぐさでキーを叩いている。教える高校生・高専生は言葉を選びながら、伝わらないと感じるとさらに言葉を探しながら、ときおりキーボードに手を伸ばして指導する。「ITジュニアの卵」たちが、これから先、大きく羽ばたいていくことを確信できたのは、見守る大人にとってもこの夏の大きな収穫だった。

 ITジュニア育成交流協会は、「先輩が後輩を教える」仕組みをもつU-16プロコンの全国各地域への展開を支援している。多くの子どもがプログラミングの楽しさに触れ、日本の未来を担うITジュニアとして育っていくために、地域の志ある大人たちとともにU-16プロコンの定着を目指す。

(文・写真:ITジュニア育成交流協会 市川 正夫)