若年者ものづくり競技大会電子回路組立て、四国職能開大学校から初の金賞

 今年で12回目を数える若年者ものづくり競技大会が、8月3日と4日の2日間、愛知県で開催された。メカトロニクスや旋盤、ウェブデザインなど15の職種が会場に分かれて行われた。BCN ITジュニア賞の対象である電子回路組立ては、電気工事やグラフィックデザイン、造園などと同じ名古屋市の中小企業振興会館で実施された。

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28名が競った電子回路組立て

 28名の選手が参加した電子回路組み立て部門の金賞/厚生労働大臣賞は、四国職業能力開発大学校の大西海輝選手。四国職業能力開発大学校は、5回目の挑戦で初の金賞を射止めた。強豪校の長野県松本工業高校や愛媛県立松山工業高校はいずれも銀賞で、一歩及ばなかった。関係者の話では、今年の課題は例年よりも難易度が低く、僅差の戦いだったという。

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電子回路組み立て部門で金賞を受賞した、四国職業能力開発大学の大西海輝選手

 4時間の競技時間内に小規模な組込みシステムの開発を行う電子回路組立て部門。選手はまず、あらかじめ知らされている仕様書に従って基盤の組立てから始める。すばやく正確に部品を取りつけ、ハンダづけしていく地道な作業だ。現実のものづくりの世界では、ハンダづけは耐久性だけでなく電気特性にも影響を与える重要で繊細な作業だ。仕様書は部品取りつけの形態からハンダの乗せ方まで、詳細に指示されており、これらが採点の基準になる。選手は日頃使い慣れた作業環境を会場に持ち込み、真剣に組立てに臨んでいた。

選手たちが組み立てた基盤-右上の板状の部品が液晶ディスプレイだ.jpg
選手たちが組み立てた基盤。右上の板状の部品が液晶ディスプレイだ

 基盤が完成すると、次はプログラミングだ。競技開始時に発表された五つの動作モードをプログラミングで実装していく。今回はボリュームつまみを回すとレベルメーターが上下するようにしたり、色を変えて表示させたりといったものから、傾きセンサを使った水準器表示、イラストを表示とその反転などが課題だった。日々利用する電子機器でよくみられる表示や動作で、一見簡単な制御だが、実際にプログラミングしていくとなると意外に大変な作業だ。仕様書は、プログラム記述上のガイドラインをこと細かに示している。ソースコードの読みやすさ、整然とした関数名のしかたや、的確なコメント文の記述なども求められており、可読性が高く保守性にすぐれたソースコードの記述も審査の対象になる。4時間が経過すると、USBメモリにプログラムを保存し、基盤とともにプリントアウトしたソースコードを提出して競技が終了した。

ハンダづけからプログラミングまで-現代のものづくりを実践.jpg
ハンダづけからプログラミングまで、現代のものづくりを実践
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自ら組み上げた基盤にプログラミングで命を吹き込む

 なかにはプログラム作成段階で基盤の修正を行っている選手もおり、基盤作成とプログラミングが表裏一体になったこの競技の難しさを感じさせた。ハードウェアとソフトウェアの両方がわかるエンジニアは、現代のものづくりでは不可欠な存在。熱戦を繰り広げた28人の選手は、いずれ日本のものづくりの根幹を支える人材に成長していくに違いない。

(文・写真:ITジュニア育成交流協会 道越一郎)