今年二冠、高校生ものづくり電子回路組立部門は川島大和さんが優勝

 BCN ITジュニア賞2020対象コンテストの掉尾を飾る第19回高校生ものづくりコンテスト全国大会(近畿大会)電子回路組立部門が、11月16~17日、兵庫県尼崎市の尼崎工業高校で開催された。夏の第14回若年者ものづくり競技大会電子回路組立てで金賞、銀賞に輝いた選手が3人、さらに銅賞を獲得した2校が選手を替えて出場するなど、開始前からハイレベルの戦いが期待されたが、その期待にたがわぬ"静かな激闘"が繰り広げられた。

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 高校生ものづくり全国大会(主催:公益社団法人全国工業高等学校長協会)は、工業高校のものづくり教育の成果を競うコンテストで、旋盤作業、自動車整備、電気工事、電子回路組立、化学分析、木材加工、測量の7部門がある。このうち電子回路組立部門は、2時間半の制限時間内に設計仕様にもとづいて電子回路基板を設計・製作し、大会当日に提示される課題の動作をするようプログラムを書いて、設計力と組立て技術、プログラミング技術、作業態度などを競う組込み技術系のコンテスト。出場するのは、全国9ブロックの代表9人と開催地の校長会から推薦された1人、計10人の選手だ。

 競技は9時にスタート。選手たちは、まずははんだごてを手に電子回路の組立てから取りかかる。真剣な表情で作業に集中する姿は、どの選手も同じだ。しかし時間が経過して、組立てを終えてプログラミングに取りかかるタイミングで、少しずつ差が出はじめる。

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プレ審査では動作を確認して○×で集計していく

 11時半、競技が終了すると、プログラムのプレ審査に移る。これはつくり上げた電子回路が課題通りの動きをするかどうかを確認するもので、各選手の作業机に審査員がついて、選手たちが入力装置を操作する。今年の課題はAからHの八つで、事前に出場校の先生に確認したところ、「予想していたものより少しやさしい。」とのことだったが、プレ審査で最後の課題Hは選手全員が動作を確認できなかった。それでも、課題作成に携わった審査員からは、「Hはできないだろうと半ば予想して出した課題だったが、後で確認したらほとんどできている選手がいて、レベルの高さに驚いた」という言葉が発せられた。

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優勝/厚生労働大臣賞に輝いた富山県立砺波工業高校の川島大和さん

 その後、基盤の設計力・技術力の最終審査を経て、見事優勝/厚生労働大臣賞に輝いたのは、富山県立砺波工業高校の川島大和さん。第14回若年者ものづくり競技大会に続いて二冠を制した。準優勝は長崎県立長崎工業高校の平村恵人さん。平村さんも若年者ものづくり競技大会は銀賞で、雪辱はならなかったが実力をいかんなく発揮した。3位には北海道函館工業高校の田原和真さんが入った。

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表彰式で同じ会場で行われた電気工事部門の入賞者たちと記念撮影

 高校生ものづくりコンテスト全国大会電子回路組立部門は、毎年、学校の教室で選手と指導者、大会実行委員や審査員だけが会場に集う静かな大会だ。しかし実力者が揃った今大会は、静けさのなかにはっきりと熱気が感じられる激闘で、終了後の選手や指導者の顔には、闘いきった満足感の笑顔が浮かんでいた。

(文・写真:ITジュニア育成交流協会 市川 正夫)